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吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

ズートピア

映画

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 肉食獣と草食獣の共存というテーマは日本アニメ「おまえうまそうだな」と同じだ。絵のスケールや技術力は「ズートピア」が圧倒するが、相容れない両者の軋轢や葛藤は「おまえうまそうだな」のほうが深かった。

 ディズニーアニメの技術力には今更驚かないのだが、それでもやはり目を見張る。ズートピアというのは肉食獣と草食獣が共存する理想郷のことだ。しかもそこは摩天楼の大都会。未来都市のようなカラフルで曲線に溢れた都市設計が夢のように美しい。そのズートピアの四つの地区を走り抜ける列車の疾走感が酩酊を生むほどに素晴らしい。

 ズートピアの外にある田舎に住むウサギのジュディの夢はズートピアで警官になること。もし実現すれば史上初のウサギの警官誕生だ。この世界は何年か前から、肉食獣と草食獣の共存が実現し、「誰でも何にでもなれる。誰でもなりたいものになれる」ことになったのだ。だから、ウサギの警官だってきっと! でも現実は厳しい。幼いころから警官になりたくてたまらなかったジュディに両親は「わたしたちは幸せよ、夢を捨てたから。今のままで満足なの」と諭す。

 分相応に生きるということを知っている両親は幸せなのだ。一方、夢を抱いてしまったジュディには過酷な現実が待ち構える。死に物狂いの努力の末にジュディは夢をかなえるのだが、さてここでどちらの生き方が幸せなのか、と観客は問われていることになる。もちろん映画はジュディの「夢にチャレンジ」を支持する。いかにもハリウッド映画らしい、アメリカンドリームもの。そしてこの映画ではウサギはウサギらしく、キツネはキツネらしく、という先天的な「らしさ」を打ち破る個性を称揚する。ジェンダーフリーなんですね。

 で、夢をかなえてズートピアの警官になったジュディは謎の連続失踪事件を担当することになる。これがまたいろいろあって結構スリリングな謎解きが待っている。ここでもまた、観客は自らの価値観を試されることになる。「こんなのママじゃなーい」(「クレヨンしんちゃん」)じゃないけど、「あんなのはわたしの愛したあの人じゃない」という姿に変わってしまった相手を愛せるのか? 病気やケガによって、愛する相手が見る影もなく変形してしまうことはあり得る。それでもあなたはその人を愛せますか? そういうクリティカルな状況が描かれるけれど、そこはそれ、子ども向けのアニメですから、あまり深入りはしません。

 でもこの映画は考えさせる種をたくさん撒いてくれているので、一つずつうまく思考の畑で育てることができるだろう。楽しくて考えさせてくれる映画。ナマケモノが役所仕事をする様子なんて爆笑もの。お薦め。

ZOOTOPIA
108分、2016、アメリカ
監督: バイロン・ハワード、リッチ・ムーア、共同監督: ジャレド・ブッシュ、製作: クラーク・スペンサー、音楽: マイケル・ジアッキノ
声の出演: 上戸彩森川智之三宅健太高橋茂雄玄田哲章竹内順子