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吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

さざなみ

映画

 原題は「45年」。結婚45周年を祝う夫婦に突然現れた過去の女性の存在が、二人の間に亀裂を生み、さざ波どころではない波風を立てることになる。

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とある片田舎に住むケイトとジェフはともに教員だった夫婦。今週の土曜日には結婚45周年を祝うパーティを盛大に開く予定である。40周年はジェフの病気のためにパーティができなかったから、その分も今回はちょっと派手かも、と思うようなパーティになる。とはいえ、ケイトの教え子や友人たちが計画を手助けし、進めてくれている手作りのパーティなのだから、それはとても楽しみなものだ。パーティのためのドレスも買いに行かなくては。
 退職して何年も経つ二人は犬を散歩に連れていき、車で町へ買い物にでかけてカフェでコーヒーを飲み、ささやかな食事を家で摂る。本を読み、その感想を軽口とともに言い合うとても落ち着いた、知的で静かな生活。子どもはいないけれど、なんの不満もなく静かに愛し合う日々を過ごしていた。月曜日までは。その手紙が届くまでは。

 手紙には、ジェフがケイトと出会うまえに愛した女性の遺体が氷河のなかから見つかった、と書いてあった。50年間彼女は若いころの姿のまま、氷河に閉じ込められていたのだ。「彼女が生きていたら、結婚した?」と尋ねるケイト。「ああ、そのつもりだった」とにべもなく答えるジェフ。スイスに眠る彼女に会いに行くつもりなのか、町の旅行代理店にこっそり出かけるジェフを見て、ケイトは激しい嫉妬にかられる。45年目にさざ波が立った、一組の夫婦の物語はどのように転がっていくのだろう。

 物語の設定にあまりリアリティを感じることができないし、不用意な夫の言動も単なる無神経な男としかわたしの目には映らず、なんでそんな男の「昔の女」に今更嫉妬するのかさっぱり理解できないのだけれど、シャーロット・ランプリングの演技にだけは旋律が走った。この人の目が怖い、口元が怖い、黙って唇を横一文字に結んでいる姿の後ろにメラメラと冷たい炎が見えるような無表情が怖い。
 演出にはさほどの切れ味を感じることはないが、このシャーロット・ランプリングの演技に恐れをなして高評価。

45 YEARS

95分、イギリス、2015 
監督・脚本: アンドリュー・ヘイ、製作: トリスタン・ゴリハー、原作: デヴィッド・コンスタンティン 
出演: シャーロット・ランプリングトム・コートネイ、ジェラルディン・ジェームズ、ドリー・ウェルズ