吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ヴィジット

f:id:ginyu:20160505184233p:plain

 久々にヒットしました、シャマランのホラー。超絶怖かったと同時に笑ってしまう箇所もいくつもあって、なかなか楽しめる娯楽作。何が怖いといって、年寄り程怖いものはないということがわかったことが怖かった。
 ふだん老人と接することのな子どもたちにとって年寄りほど不気味で理解できないものはないのだろうな、と思わせる展開。生まれてから一度も会ったことのない祖父母の家に二人だけで遊びに行くことになった15歳と13歳の姉弟。姉のベッカはビデオ撮影に夢中になっていて、これを契機に祖父母と母とが和解するような記録を作ろうと張り切っている。ベッカたちの母は二十歳になるやならずで家出して以来、両親に会っていなかった。ベッカは母が祖父母と仲直りしてくれればいい、と願っている。ベッカが撮影する映像がそのままこの映画になっているという、ブレア・ウィッチ・プロジェクト系あるいは「パラノーマル・アクティビティ」系(わたしはどっちも見てませんが)の作品。15歳が撮ったにしてはカメラアングルとか画質とかできすぎている点が笑ってしまうが、まあそこは目をつぶりましょう。

 人里離れた田舎の村にポツンと建つ祖父母の家。雪で覆われていくその様を見た瞬間に「シャイニング」系の話かな、と楽しみであり怖くもあり。この子たち、このまま雪に埋もれてこの家に閉じ込められちゃうのかなーとゾクゾク。弟くんのタイラーが「思った通りだ。(携帯の)電波が立ってない!」と言う場面で「来た来た来た!」と期待してしまうわたくし。これきっと、伏線だよ、伏線。

 シャマランの意地悪さが随所に出ている映画で、ついつい先読みしたがる観客をいたぶっているようなところが感じられる。ベッカが祖母に命じられてオーブンの中を掃除する場面なんて、「ヘンデルとグレーテル」を思い出して手に汗握ってしまったじゃないのー。やってくれるわね。

 ジジババは、「わたしたちは9時に寝るからね。9時過ぎたらドアを閉めて寝なくちゃだめよ。起きてきたらだめよ」なんて言われちゃうと、好奇心で目がランランの子どもたちはドアを開けたくなるわよねー。で、開けたらそこには・・・!!!

 てわけで、ドアを開けた瞬間の恐怖と爆笑の渦! こんな真面目に怖くて笑えるホラーは今までなかったよ。少女がビデオカメラを回したり、スカイプで母親と連絡を取り合ったりと、今どきの最新機器やネットワークを駆使する演出はなかなか興味深かったし、時代を映していて面白い。そして子どもの好奇心というものは怖いものをなんでも見に行くんだなー、そんなところを見に行くより先に逃げたらどうよ! あ、逃げたら映画にならんか。とか一人ツッコミながら見てました。あー、面白かった。

 超高齢社会を迎えて、老人って恐ろしい存在になっていくのだろう。そんなことを思わせた作品だった。タイラー少年のラップはなかなか上手だったし、お姉ちゃんのベッカ役のオリヴィア・デヨングはダイアン・クルーガー似の美少女で、とっても将来が楽しみ。

THE VISIT
94分、アメリカ、2015 
製作・監督・脚本: M・ナイト・シャマラン、製作: ジェイソン・ブラム ほか、撮影: マリス・アルベル 
出演: オリヴィア・デヨング、エド・オクセンボウルド、ディアナ・ダナガン、ピーター・マクロビー、キャスリン・ハーン