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吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

ワールド・ウォーZ 3D

 機関紙編集者クラブ『編集サービス』紙に掲載した映画評のうち、自分のブログにアップしていなかった作品をさらえていくシリーズ」第7弾。

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 ホラー苦手なわたしにも充分楽しめる、ゾンビ系ホラー・パニック感染映画。ブラピことブラッド・ピットが製作・主演したなかなかの力作で、「バイオハザード」系列にありながら、かの作品のような非現実的ド派手アクションに走ったりすることなく、映画内リアリズムに徹している。

 ブラピ一家の平穏な朝食風景から映画は始まる。それが最後の平和な朝だったということは間もなく分かる。場面はハイスピードで展開し、破滅はあっという間にやってくる。都会の大渋滞に巻き込まれたブラピ一家の車の上をヘリコプターが何機も旋回し、遠くで爆発音が聞こえたと思う間もなく大型トラックが暴走を始める。人間を襲う「狂暴化人間」が猛スピードで車に体当たりをかけ、異常事態を悟ったブラピは危機一髪のところで家族を連れてその場を脱出する。この巻頭のパニック場面の演出が小気味よい。いったい何が起こったのかと観客に考える暇を与えず、事態は次々と展開していく。パニック、カーチェイス、格闘、ガンファイト。ここでブラピが腕利きの国連調査委員であったことが明らかにされ、彼は家族の命と引き換えに、感染症の原因調査とワクチン開発のための捨て身の任務に就くこととなる。

 謎のウィルスに感染した人間がゾンビと化し、人間を襲う。大量のゾンビが濁流のように押し寄せる場面は圧巻で、高い壁をまるで虫の大群が這い上がってくるかのように駆け上ってくる場面は口あんぐり。津波が防波堤を乗り越える画面を思い出してぞっとする。

 また、このゾンビが音に反応するため、ゾンビを刺激しないようブラピたちが息をひそめて行動する場面では、静かな緊張に脈拍急上昇。演出は緩急自在、喧噪と静寂との切り替えも巧みだ。

 オープニングのタイトルも3Dならではの遠近感のある効果を見せて魅力的だし、3Dの特性がよく生かされている。ゾンビが画面から飛び出してくるところなんて本当に怖くて思わず目をつぶってしまう。

 さて、問題はいかにしてこの事態を打開するのか、だ。勇気と知恵があれば人は未知の相手とも闘える。人類はウィルスに勝てるのか? 物語の中にはいくつも伏線が張ってあるのだが、すべてを回収しきれていない。撒いた種の収穫は全部終わっていないし、名優デビッド・モースを無駄遣いしているし、これはどうやら続編を作る気満々とみた。 
 
 一番息詰まる怖い場面でわたしは体をこわばらせていたのに、隣席の男性が声をあげて笑っていたのは謎だが、怖すぎて笑えるとうい場面もちゃんと用意してある、上出来のエンタメ作。家族全員で安心して震えてください。

WORLD WAR Z
116分、アメリカ、2013 
監督: マーク・フォースター、製作: ブラッド・ピットほか、原作: マックス・ブルックス、脚本: マシュー・マイケル・カーナハンドリュー・ゴダード、デイモン・リンデロフ、音楽: マルコ・ベルトラミ
出演: ブラッド・ピット、ミレイユ・イーノス 、ジェームズ・バッジ・デール、ダニエラ・ケルテス、デヴィッド・モース