吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ラスト・スタンド

 機関紙編集者クラブ『編集サービス』紙に掲載した映画評のうち、自分のブログにアップしていなかった作品をさらえていくシリーズ」第5弾。

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 2013月4月から高年齢者雇用安定法が改正され、事実上65歳まで定年が延長されることとなったので、シュワちゃん(65)も主役を張ることになりました。
 …んなわけないでしょうが、アーノルド・シュワルツネッガー10年ぶりの主演作はわかりやすく頭の全然疲れない娯楽作の王道をゆく。彼がメキシコ国境近くの田舎町の保安官役で登場することからもわかるように、テイストは西部劇。
 囚人に逃げられたFBIがシュワちゃんの保安官事務所に電話してきたことが事の発端で、逃げたのが傭兵部隊を率いる麻薬王だから、さあ大変。犯罪などなにもおこらない田舎町の、暇を持て余した副保安官たちは「囚人が国境を越えようとするのでSWATを送る」との指令にたちまち色めき立つ。SWATが到着する前に早くも麻薬一味による襲撃が始まった。
 相手は軍隊並の装備をもち、時速400キロのスポーツカーを操ることもできるイケメン麻薬王。対するこちらは老人と急ごしらえの副保安官と第2次世界大戦で活躍したレトロな武器で迎え撃つ。
 そもそも臨時に雇った副保安官というのがいい加減なもので、雇用期限は「必要でなくなるまで」て、そんなので労働契約法違反にならないのでしょうか。そもそもこれは雇用期間の定めのある契約なのかどうか? 裁判になったらもめそう、とか余計な心配をしてしまったではありませんか。
 ところで本作はミュージアム映画である。「武器博物館」なる怪しげな倉庫が登場するのだ。田舎町の武器オタクが第2次世界大戦で使用された武器を収集し、日夜整備に余念がない。このたびようやくこの武器が日の目を見ることになり、大喜び。この道化も的を射た配役で、楽しい。
 気になるシュワちゃんの保安官ぶりはいかに。やはり老いはかくせないし、裸体を見せないので筋肉隆々ぶりが確認できないのも残念。ちょっとおなかが出ているような気がしなくもなくて、渋い表情や枯れた無口な中高年ぶりは高倉健か!
 クライマックスの「真昼の決闘」での銃撃戦も手に汗握り、さらに最後の一騎打ちはとうとう素手の格闘技に。若い麻薬王に「お前はもう人生終わりだ、おれはこれからだ。金をやるから見逃せ」と買収を持ち掛けられてももちろん正義の味方のシュワちゃんは動じない。お互い思い切り投げたり殴ったりするのになぜか死なない八百長プロレスのような死闘を繰り広げる。最後は麻薬王の反則技が登場するが、やっぱりシュワちゃんは強い!
 もう紙幅が足りないので詳細は省くが、この娯楽映画にはさりげなく「移民、男女共同参画イラク戦争」という社会派タームがちりばめられているので注意深くご覧あれ。

107分、アメリカ、2013
監督:キム・ジウン、製作総指揮:ガイ・リーデルほか、脚本:アンドリュー・クノアー、音楽:モグ
出演:アーノルド・シュワルツェネッガーフォレスト・ウィテカージョニー・ノックスヴィルロドリゴ・サントロ