吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

龍三と七人の子分たち

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 脱力できる映画を観たい気分。というわけで、老人やくざのコメディを選んだ。去年我が家のS次郎(22歳)が映画館へ見に行って「面白い」と喜んでいた北野作品だ。確かに面白い。藤竜也の女装が最高傑作。思わず大声で笑ってしまった。

 で、子分が七人? 六人しかいてないやんか、と思ったら途中で一人増えてる。まあとにかくストーリーはどうでもよくて、瞬間芸のギャグ連発。けれど藤竜也といい近藤正臣といい、役者の演技がうますぎて、こんな軽い映画にもったいない感じだ。藤竜也は年をとってもかっこいい。ブリーフ1枚になるシーンの見事なことよ! 多少皮がだぶついてはいるが、74歳でこれなら十分素晴らしい。

 ギャグが滑っているとかいう噂もあったが、昭和人間には十分面白い。元ヤクザの爺さんたちが暇を持て余して同窓会のノリで集まり、新しい組を作ってしまう。敵は暴走族上がりの新興詐欺師会社。もう昔のヤクザのような人間はいないんだよ、と北野武刑事に諭されるも、じいちゃんたちは勧善懲悪ならぬ勧悪懲悪の道を暴走する。何しろ最後はカーチェイスまで登場。しかも異様にスピードが遅い(笑)。

 ヤクザ爺さんたちを演じた役者がいずれもものすごく楽しそうなので、これはさぞかし撮影現場は賑やかだったのではないかと想像させる。アドリブもだいぶ入っているのではないか。これからはこの手の老人ものが増えるだろう。もはや映画の観客ターゲットは老人に絞るほうが儲かるかもね。
 老人を食い物にする詐欺の手口が次々と暴露され、その詐欺師たちをじいちゃんたちがばっさばっさと痛めつけるのは実に痛快だ。これは現実社会の裏返しであり、「世代闘争」の老人からの闘争宣言ともとれる。肩の凝らないドタバタコメディを見たい時にはそれなりにお薦め。しかしこれ、映画館でみなくてよかったわ。小さな画面でも十分楽しめる。(レンタルDVD)

111分、日本、2014 
監督・脚本: 北野武、音楽: 鈴木慶一
出演: 藤竜也近藤正臣中尾彬品川徹樋浦勉、伊藤幸純、吉澤健、小野寺昭
安田顕矢島健一下條アトム勝村政信萬田久子ビートたけし辰巳琢郎