このシリーズ、やっぱり面白いです。前作と前々作が多少だれ気味だったのに比べると、本作はまったく退屈することなくダレることなく、したがって1分たりとて寝落ちすることなく最後まで楽しめた。
巻頭まずは久しぶりに登場した、007シリーズのガンバレル映像。そこで次次に現れては消えるのは、ダニエル・クレイグがボンド役になって以来のさまざまなキャラクター。もちろん、永遠の恋人ヴェスパーも登場しますよ。
巻頭のメキシコの「死者の日」カーニバルでの長回しは迫力たっぷり、魅力じゅうぶん。エキストラをふんだんに使って撮影された、こんな大規模なスケールの場面はぜひとも映画館で見なくては!
この巻頭の長回しだけでも何度も見たくなる面白さだ。カーニバルの会場から仮面をつけた男女がホテルの部屋へ。仮面を取ったらジェームズ・ボンドと美女。ベッドに横たわる美女「どこに行くの?」「すぐに戻る」とボンドは窓の外へ。ここから一気にアクション炸裂。興奮のるつぼに叩き込まれるオープニングだ。
007の長いシリーズも、ついにこれでおしまいか。MI6は解体されるとセリフにもあった。長期停職を命じられるボンドくん。しかし彼は、世界の情報を一極集中させる野望をもつ悪の組織「スペクター」を壊滅させるべく、単身その本拠地に乗り込むのである。もちろんいつものように美女付き。そしていつものスーツ姿。「世界一背広の似合う男」としてうちの筋肉マンSが尊敬しているダニエル・クレイグ。素敵です、今回もやっぱり。背広以外の服を着ている場面はいまいち。やっぱり背広にネクタイで登場してほしい!
ローマの町をアストンマーティンとジャガーが疾走するカーチェイスのすさまじさにも手に汗握る。この場面でアストンマーチン8台、ジャガー5台(だったかな)が撮影に使われたという。ローマでのアクションが一息つくと、次はスイスの雪山での空中と地上との銃撃戦。さらには列車内での格闘戦など、アクションはあの手この手、あの車、このヘリコプター、こっちの飛行機、あっちの列車、ととどまるところを知らない。
その間に、イタリアの至宝モニカ・ベルッチと一夜の情事を楽しんだり(モニカは何のために出てきたんだ? もう50歳も過ぎているけど色気むんむん)、フランス娘のレア・セドゥといちゃついたり離れたり。レア・セドゥは医者で、二人が初顔合わせをする問診場面もユーモラスだ。「問診票に答えが書いていないところがありますが。お酒は飲みますか?」「too much」 これはいいね、「飲みすぎ」だって。飲兵衛らしくボンドがお酒を飲む場面はお約束。もちろんマティーニも登場。「かき混ぜるな、シェイクしろ」"Shaken, not stirred" て、おしゃれですねー。
クリストファ・ヴァルツがあんまりワルすぎなくてすごみが足りないのは残念。「イングロリアス・バスターズ」のドイツ軍将校のときのほうがずっと怖かった。
ジェームズ・ボンドは絶対に死なないとわかっていても、実にスリリング。彼が不死身であることの証明のように、次々と繰り出される兵器や拷問も、ことごとくうまくすり抜けてしまうのである。「そんなバカな!」というツッコミはこの映画では許されません。
爆発もスタントシーンも一切CGなし、お金かかってるっ! を実感すべく、今すぐ劇場へ。もうこの手の荒唐無稽な世界制覇物語はなかなか難しい時代がきているのだから、21世紀のジェイムズ・ボンドを堪能すべし。世の中、テロも殺戮も全部映画の中だけの話にしておいてほしいもの。
SPECTRE
148分、イギリス/アメリカ、2015
監督: サム・メンデス、製作: マイケル・G・ウィルソン、バーバラ・ブロッコリ、
脚本: ジョン・ローガンほか、音楽: トーマス・ニューマン、テーマ曲: モンティ・ノーマン
出演: ダニエル・クレイグ、クリストフ・ヴァルツ、レア・セドゥ、ベン・ウィショー、ナオミ・ハリス、デイヴ・バウティスタ、モニカ・ベルッチ、レイフ・ファインズ