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吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

ゴーン・ガール

 きわめて後味が悪く、はなはだ不愉快でぞっとする作品なのに、最後まで惹きつけられてしまった。

 この映画を見たのは去年の年末。半日ずっと講演やシンポジウムを聴いた後、レセプションでお酒を飲んで疲れていたから爆睡するかと危惧したが、なんのなんの、どんどん目が覚めていくではないか。終わってみれば2時間半をまったくたるむことなく手に汗握っていたのも、物語がどちらに転がるのか予想がつかなかったからだ。去年一番ハラハラしたサスペンスかもしれない。

 さて物語は。結婚5周年記念のその日、妻エイミーが忽然と失踪する。自宅には誘拐を偽装する跡があり、夫のニックが疑われる。エイミーは殺されたのか? 何かの罠か? ニックは双子の妹とともに真相を究明しようとするが、事態は悪いほうへ悪いほうへと転がっていく。マスコミに叩かれるニックの逮捕は近い。果たして誰が何のためにこの罠を仕組んだのか。

 予告編で何度も小出しにされたシーンが、本編ではいよいよ大きな意味を持って伏線となる。失踪1日目、失踪2日目、と時系が示される場面と過去の回想シーンが交錯する。出会った日から恋に落ちた二人。愛し合ったNYでの日々はしかし長くは続かなかった。ニックの母の病気もあって二人は介護のためにニックの実家がある田舎に引っ越す。ときを同じくして二人ともに失業、夫婦仲はギクシャクし始める。そんな折にエイミーが失踪する。愛人との生活のために、邪魔になったエイミーをニックが殺したのか、それとも夫の浮気に復讐するためにエイミーが仕組んだ罠か。

 エイミーは美しく聡明な、自意識の高い女性であり、彼女の親が彼女をモデルに「完璧なエイミー」というヒット作を出版していた童話作家であることが、まずはこの物語の肝である。幼い頃から「演じること」を自らに課してきたエイミーにとって、結婚もまた自らの理想と自意識を実現するためのものであった。

 世の中には、『思うままに人を動かす』といったタイトルを付けられた本が大量に出回っている。それほど他者を支配したがる人間が多いのか? 他者を支配することに執着する現代人の肥大した自我、役割演技、マスコミの世論操作、警察の見込み捜査、そういった社会問題はこれまでさんざん題材にされてきた。だから本作のテーマにも目新しさはない。にもかかわらず最後までひきつけられていくのは、ストーリーテリングの巧みさとフィンチャーの演出の技の冴えゆえだろう。いつしか、自分の中にも他者を支配したいという欲望があるかもしれないと気づいてぞっとする。 

 最後までどうなるのかわからなかった本作、ラストシーンに至ってもなお「いったいこの先どうなるの?!」と叫びたくなるような、強烈な後味を残した。見終わったあとに誰かと語り合いたくなる、必見作。

 エイミー役、もう少し若ければニコール・キッドマンが演じていそうな。

GONE GIRL

149分、アメリカ、2014 

監督: デヴィッド・フィンチャー、製作: アーノン・ミルチャンほか、原作・脚本: ギリアン・フリン、音楽: トレント・レズナーアッティカス・ロス
出演: ベン・アフレックロザムンド・パイクニール・パトリック・ハリス、タイラー・ペリー、キム・ディケンズ