吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

GODZILLA ゴジラ

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  ゴジラVSモスラ! 巨大怪獣のグレートバトル!! 残念ながらモスラではなく「ムートー」というエイリアンみたいな気色悪い怪獣なので気合がそがれる。敵のデザインにも配慮がほしい。モスラのような美しさのかけらもないムートーのフィギュアには嫌悪感が募るし、「モスラーや、モスラ~♪」なる可憐な歌声もないところが非常に残念であるが、本作は日本版元祖ゴジラのテイストを随所にちりばめつつ21世紀のゴジラ像を作った点で評価できる。

 

 1954年のビキニ環礁での米国水爆実験によって生み出されたはずのゴジラは、実は放射性物質を食べて生きていた古代生物であり、これまで数々の太平洋での核実験は実験と称してゴジラを殺そうとしていたのであった! という新しい設定で始まるゴジラ映画。どうなることかと思いきや、ゴジラの敵怪獣が現れるとは知らなんだ。しかも雄と雌の番いでございます。ゴジラとこのムートーという名前の怪獣とは互いに狩り狩られる立場。ハワイやサンフランシスコの町並みを思い切り破壊しながら重量級の取っ組み合いは地響きを立てて轟然と展開する。

 ムートー2頭に羽交い絞めにあったり背面攻撃を受けながら、劣勢を立て直すべくゴジラが満身の怒りをこめてのけぞりつつ息を吸い溜め、これでも食らえっとムートーの口をこじ開けて放つ放射能火炎ビーム!! どうだ参ったか!と思いきやいきなりもう一頭が後ろから空手チョップ! おおっと、卑怯な。いけいけゴジラ! 

 とまあ、大興奮のゴジラ決戦でありました。

 

 元祖「ゴジラ」へのオマージュを込めて、ゴジラ研究者の名前は「芹沢博士」。ゴジラの立ち姿も元祖の造形をそのままに、音楽も伊福部昭のオリジナルへのオマージュたっぷり、例のゴジラのテーマの変奏曲のような作りもよし。多少長いので途中ちょっと疲れて寝てしまいましたが、それでも存分のゴジラの暴れぶりには満足。

 

 さて、そもそも「怒れる神」であったゴジラが本作ではなぜか放射能を食べてくれるコスモクリーナーみたいな怪獣になっているところがミソ。3.11の津波被害を想起させるシーンや原発建屋の崩壊、といったモロに東日本大震災がらみの映像が連発される部分は、トラウマになってしまっている人たちにはつらい場面なので観ないほうがいいかもしれない。今回のこのゴジラは震災への配慮から日本では製作不可能だったろう。

 

 いっぽう、文明批判の部分は映画ではどうにでもとれる描き方がされている。原発事故への反省があるのかないのかよくわからない主人公の父親とか、怪獣を倒すために結局は核兵器を使うという発想とか、ゴジラ頼みで原発事故を収束させようとする科学者たちとか、要するに「人間は無力だ」ということがこれでもかとばかりに描かれている。では無力な人間はどうするのか。これ幸いにゴジラ様を神とあがめるのか。答えは続編にあり。期待しよう。

 

せっかくジュリエット・ビノシュを出演させているのにあっという間に死なせてしまうなんて、もったいない! 続編で復活させてほしい。彼女が死ぬ場面は決死の覚悟で原子炉を止めに行く使命を帯びているのだが、その場面の深刻さに比して着色された煙がもうもうと迫ってくるのには苦笑してしまった。いくら放射線が見えないからそれでは画的に困るとはいっても、あのわかりやすさはどうよ。

 

 着ぐるみだった日本のゴジラと同じく、今回のゴジラも(着ぐるみこそしてないが)モーション・キャプチャーで人の動きを取り込んでいる。それがリアルな動きを見せて実に見事だ。まるでゴジラに知性や感情があるかのような演出。ゴジラがしっかり演技しているから、ゴジラに感情移入して興奮漲るのである。ゴジラのゴツゴツした皮膚のどす黒さもあの咆哮も劇場で存分に味わいたい。大スクリーン、大音響、これがなければゴジラじゃない! みなさま、今すぐ劇場へGo!

GODZILLA

123分、アメリカ、2014年

監督: ギャレス・エドワーズ、製作総指揮: パトリシア・ウィッチャー、アレックス・ガルシア、坂野義光、奥平謙二、脚本: マックス・ボレンスタイン、音楽: アレクサンドル・デスプラ

出演: アーロン・テイラー=ジョンソン渡辺謙エリザベス・オルセンジュリエット・ビノシュサリー・ホーキンスデヴィッド・ストラザーン