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吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

大統領の執事の涙

映画

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 大統領の執事は一人じゃなくて何人も居る。そして、大統領が代わっても執事は淡々と新しい主人に仕える。その場の空気になることを求められ、自分の存在を無にすることを求められる「給仕人」、それが執事の仕事なのだ。

 7代の大統領に仕えた実在の黒人執事の手記が本作の元となった。実際の話に息子との葛藤という部分を加えて、公民権運動の歴史を描いた。職務に忠実な「召使」である父と、闘士である息子との断絶は、そのままアメリカ黒人の歴史でもあろう。

 執事の仕事というものがどういうものか、その仕事ぶりはバックヤードツアーを見るようで興味深い。執事というのは家事を差配する人だと思っていたが、大統領の執事に関しては単なる給仕人とさして変わらないように見える。これは執事の数が多くて、その中で管理者と使用人とが階層分けされているためにそうなるのだろう。

 とことん自分を殺して主人に仕えることを要求される執事という仕事に、「奴隷である黒人」はぴったりだったのかもしれない。しかしそのことに批判の目を向ける息子は父を罵り、父から離れていく。確かに、「闘わない黒人」にはイライラさせられる。なんでそんな生き方しかできないのか、と言いたくなるのだが、世代間の対立や黒人どうしの対立は事実として脈々と流れていることである。

 時代は公民権運動が盛んになるとき、息子はその闘争にのめりこんでいく。長い歴史を2時間強で見せるのだから表面をなぞっていくだけに見えるのもいたしかたないのかも知れない。もう少し工夫があってもよかったのに、と思えるが、改めてアメリカ現代史と公民権運動をドラマティックに眺めるのにはよい映画だった。

 

 最後になって父が息子に語った言葉が胸に響く。「お前を失った」

 

 闘わない執事が、やがては変わっていく。それは息子たちの世代に感化された結果なのだろう。闘わずに白人に仕えることが賢い生き方だった時代に、差別から逃れるために得た職業を今の私が見て軽々に批判できるだろうか。自分がその立場にあったとき、大統領の執事という輝かしい仕事を断ったりするだろうか? 父の言い分、息子の言い分、どちらにも寄り添いたい気持ちに揺れながら映画を見ていた。

 

 歴代の大統領の配役が豪華で、そこだけでも随分楽しめる。ジョン・キューザックニクソン大統領なんてまったく似てなくて、本物よりかなり愛らしく素敵な政治家だった。ニクソンの評価が変わったわ(笑)。

LEE DANIELS' THE BUTLER

132分、アメリカ、2013

監督: リー・ダニエルズ、製作: パメラ・オアス・ウィリアムズ ほか、原作: ウィル・ヘイグッド、脚本: ダニー・ストロング、音楽: ホドリゴ・レオン

出演: フォレスト・ウィテカーオプラ・ウィンフリージョン・キューザックジェーン・フォンダキューバ・グッディング・Jr、テレンス・ハワードレニー・クラヴィッツジェームズ・マースデン

デヴィッド・オイェロウォヴァネッサ・レッドグレーヴアラン・リックマンリーヴ・シュレイバーロビン・ウィリアムズ、クラレンス・ウィリアムズ三世、マライア・キャリー