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吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

大統領の料理人

映画

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 期待したほどの面白さはなかった。たぶん、ここに登場する料理の数々に親しみや思い入れがないからだろう。トリュフが死ぬほど好きな人なら喜んで見るだろうが、見たことも匂いをかいだこともない人間にはさっぱりである。単なる黒い塊にしか見えない。なにそれ、石炭? とか思ってしまった(^_^;)


 ミッテラン大統領の私的シェフとして迎えられたのは、田舎で小さな民宿を経営する中年女性のオルタンス・ラボリ夫人。突然の召集にとまどいながらも、官邸であるエリゼ宮で助手を一人つけてもらって、大統領用の料理を作ることになる。エリゼ宮は男の世界。第一厨房のシェフたちは毎日何百食の料理を作り、第二厨房であるオルタンスの厨房では6食、10食といった単位で大統領のお気に入りの友人や親戚のために料理を作る。第一厨房のシェフたちの嫉妬や嘲笑、妨害に遭い、女シェフのオルタンスはさまざまな苦労を重ねていく。彼女に課されたことは「田舎の素朴な料理が食べたい。お祖母ちゃんの味の料理が食べたい」という大統領の願いをかなえること。


 エリゼ宮を辞して南極料理人になったオルタンスの現在と、4年前のエリゼ宮での出来事が並行して描かれていく。南極でもオルタンスは人気者だ。若者が多い南極近くの基地のなかで彼女は隊員たちのお母さん的な位置にいる。なぜ大統領の料理人を辞めたのか? たまたま取材に来ていたオーストラリアのテレビレポーターにしつこく質問されてオルタンスは口を閉ざす。お話は過去の彼女の「努力と栄光、挫折」と、現在の楽しげな南極の光景を交互に飛んでいく。


 驚くべきはエリゼ宮の厨房の広さ、第一厨房から第二厨房への行き来にも長い廊下を渡っていくこと。そして、たかが食事、されど食事、ランチのメニューひとつで大騒ぎをする官邸の様子が不思議に思えた。ランチが間に合わないというなら、近所の仕出し屋で出前を取ったらええやんか、と思うのはわたしが浅はかな日本人だからか。フランス人というのはかくも食事に異様な執念を燃やすものなのか、そこがまず驚きであった。


 映画全体はさしたる起伏もなく、起承転結もはっきりせず、メリハリのない演出に多少だれ気味になるが、そういう淡々とした作風が好きな人は楽しめる作品だ。特にオルタンス役のカトリーヌ・フロがとてもやさしそうなおばちゃんなので、ほっとする。おばちゃんだからよくしゃべるけど(笑)。料理を作りながらレシピを独り言でしゃべり続けるところが面白い。


 料理が次々に登場する映画は大好きなのでこの作品も楽しみだったが、確かにいろいろおいしそうなんだけれど、いまいちぴんと来ないのはどうしてだろう。やっぱり素朴な料理といえば肉じゃがとか卵焼き、と思う日本人には向いてないのかもしれない。(レンタルDVD)

LES SAVEURS DU PALAIS
95分、フランス、2012
監督・脚本: クリスチャン・ヴァンサン、製作: エチエンヌ・コマール 、 フィリップ・ルスレ 、共同脚本:エチエンヌ・コマール、音楽: ガブリエル・ヤーレ 
出演: カトリーヌ・フロ、ジャン・ドルメッソン、イポリット・ジラルド