吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

11:14

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 劇場未公開作品紹介シリーズ第8弾。

 あんまり期待していなかったけど、これはなかなかに面白いサスペンス。夜の11:14に起きた交通事故。その事故にまつわる人々が複雑に絡まり合い、一つの円環を作る。シチュエーションをよく考えたものだと感心する。 

 11時14分に交通事故が起きる、その時間を中心に前後でいったい何があったのかを描いていく群像劇。狭い町で複雑にからまりあう人間関係を少しずつ解き明かしていく。「あっ、あの設定がここで生きてくるのか」「なるほど、このエピソードはそういうことだったのね」と、多くの伏線がからまりあい回収されていくところはスリリングかつ爽快。短い時間によくうまくまとめたものだ。むしろ、この話でダラダラ長くやるのは無理。登場人物に魅力があるわけでもないし、シチュエーションの面白さだけで引っ張るわけだから、教訓もなければ感動もない。恋人を騙す悪女とか、不良青年たち、強盗犯、殺人、さまざまな犯罪が引き起こされ、それらが微妙な連鎖を伴って事態は悪化の一途をたどっていく。起きていることは間違いなく悲劇なのに笑ってしまう。娯楽作としてはぴったりの作品。

 

 あえて教訓をこの映画から取り出すとすれば、「因果応報」。これしかない。要するに「みなさん、真面目に誠実に生きましょう。家族を大切にしましょう」というまっとうなメッセージがこめられている。のかなぁ。そんな感じでもないか。まあ、とにかくそれなりに面白いので、理屈抜きに映画を楽しみたい分にはいいでしょう。

86分、アメリカ/カナダ、2003

監督・脚本:グレッグ・マルクス、製作:ボー・フリンほか、音楽:クリント・マンセル

出演:ヒラリー・スワンクパトリック・スウェイジ、レイチェル・リー・クック、ヘンリー・トーマス、バーバラ・ハーシー