吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

マージン・コール

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 2008年のリーマン・ショックを再現するリアルな映画。いちおうフィクションの形をとってはいるが、起きたことはほとんど事実に基づく。

 この豪華な俳優陣でこれだけよくできた脚本と演技を見せてもらえるというのに劇場未公開とは、日本の映画館も地に落ちたか?

 不良債権を抱えて倒産寸前であることが発覚した、とある銀行が舞台。深夜に急遽集められた経営陣たちの会議がリアルで緊張感たっぷり。役者もみな緊迫感漲る演技を披露している。

 金、金、金、の価値観に疑問を抱かずに見ればたいへん面白く、反省点にも満ちているが、元々お金に興味のない人間が見たら、強欲者たちの末路が哀れなだけ。しかしこのせいで世界中が不況に陥ったのだから、マネーゲームに踊る人たちの責任を無視軽視してはなるまい。

 映画じたいはほとんど室内劇と言ってもいい地味なものだが、会話のスリルが半端ではなく、役者たちが一流だからぐっと画面につかまれていく。これまで贅沢三昧してきた者たちが落ちていくさまは自業自得といえるだろう。まったく同情に値しないのだが、規模が小さいだけで、実は自分たちも同じ穴の狢ではないかと思うと背筋が寒くなる。生活レベルが落ちるというのはつらいことだ。高収入にしがみつきたくなる気持ちはわかる。この後、この銀行の役員や労働者がどうした・どうなったのか、「その後」を知りたいものだ。

 この映画はもう一度見直してみたい。実にお勉強になります。アベノミクスなるものの正体を知りたいと思うけど、この映画を観てそれがわかるかどうかは不明…。

 そうそう、今回のケビン・スペイシーは善玉です。この人が出てくると「また性格の悪い上司か」と身構えちゃうんだけど(笑)。

 

MARGIN CALL    

106分、アメリカ、2011  

監督・脚本: J・C・チャンダー、音楽: ネイサン・ラーソン  

出演: ケヴィン・スペイシーポール・ベタニージェレミー・アイアンズザカリー・クイントデミ・ムーアスタンリー・トゥッチ