仕事を終えて帰宅途中、「大雨が降っているから駅まで車で迎えに行こうか」という親切なメールが長男Y太郎から届いた。なんという優しい息子だと感動していたら、駅でそのまま「映画を見に行こう」と提案されて、映画館へ。こういう誘いについ乗ってしまう自分もどうかと思うが、まんまと息子にしてやられた感あり。
見たのは「アイアン・スカイ」という、ナチスドイツの残党が月に亡命して秘密基地を建設し、地球反攻のチャンスを狙っているというあほらしいSF映画。どうせオバカなんだから何も期待していないが、Yの「こんな映画、わしらが見たれへんかったら、誰も見ぃひんぞ。見に行かなあかん」という妙な説得に納得してしまったわたしもアホか。
で、どうせ低予算のしょうもない映画だと高をくくっていたらさにあらず。宇宙戦争のシーンその他、実にお金のかかっている映画である。こんなアホ臭い脚本を真面目に演技した俳優達もえらいが、こんな映画のために真面目にVFXを実装したスタッフも偉いし、美術さんのお仕事ぶりがなかなかのものである。
全編パロディのオンパレードなので、ブルーノ・ガンツ主演「ヒトラー最後の14日間」とかチャプリンの「独裁者」とか見ていないと絶対にダメダメ。もちろん「スターウォーズ」やら過去のいろんな宇宙戦争ものとか「博士の異常な愛情」とかのマッドサイエンティスト国際紛争ものまで、過去作品総動員。
しかしまあ、アイデアは卓抜で面白かったのだが、どんどんテンションが下がっていく。なんというあほらしさ、面白くないなぁ…と思ってあくびが出そうになるころに国連会合の場面が出てきて、北朝鮮代表の発言に爆笑。宇宙衛星の軍事利用は国際条約で禁止されているのに各国がみなその条約を破っていることが判明する場面もケッサク。ちゃんと正直に条約を守っていたのがフィンランドだけ、っていうのが笑える。あ、この作品、フィンランド映画だったんだ! こういう、国民性ネタというのはいかなる映画であろうと面白いというのはどういうことだろう。誰か分析してほしい。
この映画で笑えない人は劇場用パンフレットを購入することをお奨めします。先にこれを読んでトリビアな知識を仕入れて臨めば10倍楽しめる(たぶん)。
IRON SKY
93分、フィンランド/ドイツ/オーストラリア、2012
監督: ティモ・ヴオレンソラ、製作総指揮:サン・フー・マルサほか、脚本:マイケル・カレスニコ、ティモ・ヴオレンソラ、音楽:ライバッハ
出演: ユリア・ディーツェ、ゲッツ・オットー、クリストファー・カービイ、ペータ・サージェント、ステファニー・ポール、ティロ・プリュックナー、ウド・キア