吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜

 いま、ハリウッド若手俳優ナンバー1の魅力を放つライアン・ゴズリング。連続レビュー第1弾。

 アメリカ大統領予備選をめぐる駆け引きの数々。大統領選挙が行われる今年、時宜を得た作品。政治に関心の高いジョージ・クルーニーらしい作品だ。
 
 民主党候補者の予備選を担う若きエース広報官スティーブン(ライアン・ゴズリング)が主人公。大統領候補は監督を務めたジョージ・クルーニーが演じる。クルーニーは実際に大統領候補になってもいいのではないかと思えるほどオーラの漂う政治家ぶりだ。男前だし、弁舌爽やか、理想を掲げて闘う民主党候補者にぴったり。

 それにしても、同じ民主党候補なのに予備選でこれほど汚い選挙戦を繰り広げて、本選で一つの党として結束できるものなのか。政治の世界がここに描かれているように権力争いのスキャンダルまみれ、欲と野望の剥き出しに過ぎないとしたら、あまりに夢がなさ過ぎるのではないか。
 敵陣営の脚をひっぱり、イメージを落とさせるためにはデマでもなんでも使う。「事実かどうかは問題じゃない。スキャンダルの噂だけであってもそのウラを調べて否定するのに相手は手間暇をとられる。それだけでも効果があるんだ」。ほぉ〜、最近某大阪市で起こった組合資料捏造と同じですなぁ。自分の敵を追い落とすためには手段を選ばない、というやり方は維新の会のお得意だろうから、この映画で行われているような数々の策略も彼らにとっては大変勉強になる「よい事」ではなかろうか。

 閑話休題。ライアン・ゴズリングが最初から最後までカッコいい。政治の裏取引、足の引っ張り合いを通じて彼自身が泥にまみれていき、それが政治の世界を生きる者の「成長」として描かれる皮肉。実にいい演技を見せてくれた。脇を固める演技陣が万全なので、安心して見ていられる、政治サスペンス。スリリングで最後まで惹きつけられた。

THE IDES OF MARCH
101分、アメリカ、2011
製作・監督・脚本:ジョージ・クルーニー、共同製作:グラント・ヘスロヴ、ブライアン・オリヴァー、製作総指揮:レオナルド・ディカプリオほか、原作:ボー・ウィリモン、共同脚本:グラント・ヘスロヴ、ボー・ウィリモン、音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演: ライアン・ゴズリングジョージ・クルーニーフィリップ・シーモア・ホフマンポール・ジアマッティマリサ・トメイジェフリー・ライトエヴァン・レイチェル・ウッド