落ちぶれた役者を見事カムバックさせるバックステージものシリーズ3連続アップ! の第2弾。午前十時の映画祭にて。
もっとフレッド・アステアのタップダンスが楽しめるのかと期待していたら、ほとんどタップがなかったので残念。その代わり何種類ものダンスを楽しめた。とはいえ、全体としてはいまいちモタモタした展開で、あまり面白いとも思えない。公開当時にはダンスの魅力で売れたのだろうが、今から見るとそれほど目覚しい踊りでもない。また、個人的には好きなメロディーの曲もなく、MGMミュージカルの最高傑作という世評に反し、やや期待はずれだった。
期待はずれの原因はストーリーの単純さや、もったいぶってスピード感を殺してしまった前半の演出にある。さらにいえば、後半のあっと驚くご都合主義的展開とか。ストーリーは後からつけたのであって要するにフレッド・アステアとシド・チャリシーのダンスを見せたかったのだといえばそれまでだけど。フレッド・アステアの踊りを見てマイケル・ジャクソンの踊りに似ている、と驚いた。そうか、マイケルはアステアのこの踊りに触発されたのか。
ストーリーには期待せず、ダンスやコントを楽しむ映画と割り切れば結構いい感じの作品ではあるが、わたし個人の好みを言えば、ミュージカルとしては「ウェスト・サイド物語」や「マイフェア・レディ」のほうが好きだ。ダンスなら「コーラスライン」や「キャッツ」のほうがはるかに素晴らしい。今見ると、この「バンド・ワゴン」はいかにもMGMといったお行儀の良さや古めかしさ感じさせる。
THE BAND WAGON
112分、アメリカ、1953
監督:ヴィンセント・ミネリ、製作:アーサー・フリード、脚本:ベティ・コムデン、アドルフ・グリーン、音楽:ハワード・ディーツ、アーサー・シュワルツ
出演:フレッド・アステア、シド・チャリシー、ジャック・ブキャナン、オスカー・レヴァント、ナネット・ファブレイ