吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

崖っぷちの男

 MAN ON A LEDGE は警察用語らしい。飛び降り自殺しようとしている人のことを指すという。この映画で飛び降り自殺しようとしているのは元警官で今脱獄中、というそれこそ崖っぷちの男だ。舞台となったルーズベルトホテルはNYの三ツ星ホテルだって! そんなところをロケさせてもらえたのか、すごいですね。でもこのホテル、見た目は古めかしくてそれほど高さもない。映画ではあまり威風堂々とした感じを受けなかったのに、ネットで写真を見たらとてもいい。

 「アバター」に主演以来あまりみかけなかった(て、わたしが見てないだけか、いろいろ出演はしているようね)サム・ワーシントンが主人公の崖っぷち男を演じていて、これがまた本当に窓のヘリに立っていたというから驚きだ。いくら命綱をつけているからといって(綱はあとからCGで消す)、あんな高いところで演技させられるなんて役者は大変です。わたしなら絶対やらないね! 

 この脱獄中の元警官ニックは宝石泥棒の罪で服役中なんだけれど、それはエド・ハリス(老けた痩せたやつれた)演じる実業家にハメられたせいで、ニックは復讐と自分の冤罪を晴らすために大芝居を打ったのである。ニックがホテルの21階で飛び降り自殺の真似をして世間の耳目を集めている隙に向かいのビルでは彼の弟とその恋人がスリリングなミッション・インポッシブルを展開中、というお話。アイデアは面白いし、なかなかスリルがあってよかったのだけれど、どういうわけか観客をぐっとつかみにくる魅力に欠けている映画だ。一つは、ミッション・インポッシブルな技がいまいちスピード感に欠けていて、それは素人がやっていることだから仕方がないのかもしれないけれど、スパイ物「MI」などで既視感の強い場面だから、新鮮味がない。

 アクションがいまいちなのが致命的なアクション映画だけれど、最後に大技が出るのでお楽しみに。意外によかったのは最初に交渉人としてやってきたドハーティ刑事を演じたエドワード・バーンズ。なかなか渋いキャラだった。ニックの弟役のジェイミー・ベルはダンスシーンを見せてくれるのかと期待したが、一瞬ステップを踏む場面があるだけ。出し惜しみしないでほしい。

 最後の種明かし、わたしは気づいていたので「やっぱり」と満足。全体としてはご都合主義あり、間延びしたところあり、捻りがない、といった不満点がいくつもあるけれど、そこそこ面白い作品。最初にどれくらい期待度が高いかで評価がころっと変わりそう。

MAN ON A LEDGE
102分、アメリカ、2011
監督: アスガー・レス、製作: ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ、製作総指揮: ジェイク・マイヤーズ、デヴィッド・レディ、脚本: パブロ・F・フェニベス、音楽: ヘンリー・ジャックマン
出演: サム・ワーシントン、エリザベス・バンクス、ジェイミー・ベルアンソニー・マッキー、エド・バーンズ、エド・ハリス