吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

オレンジと太陽

 ケン・ローチの息子ジム・ローチのデビュー作。デビュー作なんだからこの程度だと思うべきか。普通の映画だったが、誠実に作られている。緊迫感に欠けるけれど、不正を告発し闘う人に寄り添いたいという気持ちにあふれた作品だった。イギリス映画らしい落ち着きがある。――誉めているのかけなしているのか自分でもわかりません(苦笑)。

 結末がすぐに見えてしまうところが痛いのだが、児童移民の実態を調査するマーガレットが脅しに遭ったり精神的に不安定になる場面などが挿入されていて、なかなか一筋縄ではいかない、という点を描いていたのがよかった。

 イギリスでは長らくタブーとされていた、孤児のオーストラリアへの移民問題は、成人した孤児達が「自分が何者なのか知りたい、親はどこにいるのか、なぜ自分は捨てられたのか」と真相究明を熱烈に乞うことから露わになった。この問題に偶然かかわることになったケースワーカーのマーガレットは、やがて私生活も犠牲にして調査活動に本格着手するようになる。

 マーガレットは孤児たちの出生や家族関係を調べるために英国国立公文書館などいくつかのアーカイブズで資料に当たる。この場面こそまさに「アーカイブズの存在意義は”Who am I?" に答えること」という文言を想起させる。

 それにしてもやたら善人が登場するのが解せない、と思うのはわたしがよほど悪人なのか(苦笑)。

 うちの長男Y太郎に言わせると「ドキュメンタリーみたいな作品やな。こういうことがありました、という記録だけ。へたくそな映画や。すべてのカットが中途半端に終わっていて、この次どういうリアクションがあるのが見たいと思うところが全部撮れていない」ということらしい。しかしそれは余韻を残す演出とも言えるのではなかろうか? とはいえ、確かに本作に映画的な面白さが感じられたのは修道院が建っている砂漠の場面だけだった。

 父ケン・ローチならこの素材でどんな映画を作るだろう? ふとそんなことを思った。

ORANGES AND SUNSHINE
106分,イギリス、2010
監督:ジム・ローチ、製作:エミール・シャーマン、カミーラ・ブレイ、原作:マーガレット・ハンフリーズ『からのゆりかご 大英帝国の迷い子たち』、脚本:ロナ・マンロ、音楽:リサ・ジェラルド
出演: エミリー・ワトソンデヴィッド・ウェナムヒューゴ・ウィーヴィング、タラ・モーリス、アシュリング・ロフタス、ロレイン・アシュボーン