吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ネイビーシールズ

 本物の海兵隊特殊部隊の隊員が出演している、というのが売りの映画。隊員も武器弾薬もすべて本物、というのが最大の売りだけあって、戦闘シーンの迫力はハンパじゃなかった。
 役者じゃなくて素人に演技させているわけだから、役者に求めるような「同じ演技の撮り直し」ができない。アクションシーンも連続して撮りたい。というわけで、ほぼ1テイクでOKが出るように、カメラは12台も一気に廻したときもあるという。ヘッドカメラ多用による臨場感も素晴らしい。

 山場は3つあって、最初の山場だけで充分面白かったのに、次々と新しい山場を無理に作るものだから、最後は飽きてしまった。

 見終わってみれば、海兵隊のプロモーション映画であったことがよくわかるが、さりとて、確かにネイビーシールズのメンバーが命を賭けてテロと戦っているのも事実。問題は、その根本のところがすっぽり捨象されていることだろう。そもそもなぜ9.11のテロが起きたのか。なぜアメリカはテロと戦うハメになったのか。争いの起源を問わない物語には、頭を空っぽにして現状に立ち向かうという兵士特有の感覚が全面展開している。それだけにスリリングで見ごたえたっぷり満腹感のある映画だ。もはや戦争の起源は問うても意味がないのかもしれない。イスラエル側にすれば起源は3000年も遡るわけだし、アラブ側にしても100年以上も遡るわけだ。

 そんなことを薄ぼんやりと考えながら見ていた。アクションものとしては相当に面白い一作。

ACT OF VALOR
110分,アメリカ、2012
製作・監督:スコット・ウォー、マウス・マッコイ、脚本:カート・ジョンスタッド、撮影:シェーン・ハールバット、音楽:ネイサン・ファースト、企画協力:トム・クランシー
出演:ロゼリン・サンチェス、ジェイソン・コットル、アレックス・ヴィードフ、ネストール・セラノ、エミリオ・リヴェラ