吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

マイウェイ 12,000キロの真実

 「山本五十六」に続いて戦争映画をご紹介。これまた一ヶ月ほど前に見たので遅きに失したかも…。


 あまりの波乱万丈の嘘のようなお話に、「ほんとに真実なのか、実話なのか」と疑いながらエンドロールを見ていた。パンフレットを読むと、ノルマンディ上陸作戦の折にアメリカ軍の捕虜となったドイツ兵の中に日本人がいて、その日本兵はソ連とドイツの軍服を着て戦闘に加わった数奇な運命の持ち主であったという驚くべき事実だけが実話で、その話からカン・ジェギュが物語を膨らませていったということが判明。やっぱり。

 実話の大筋はこうだ。1939年、ノモンハン事件の折にソ連の捕虜となった日本兵がシベリアの捕虜収容所送りとなり、日ソの捕虜交換者名簿に記載されずに独ソ戦の前線にソ連兵として送り込まれる。おそらくスターリングラードの市街戦だと思われるその戦いから脱走した日本兵はドイツ側に投降して「自分は日本人である」と主張。今度はドイツ軍の軍服を着てフランスに派遣され、ノルマンディ上陸作戦の折に連合軍(米軍)の捕虜となった。



 して、映画はここに日本兵(将校)の幼馴染の朝鮮人を配して、彼らの憎悪と友情を描く感動物語に仕上がった。実話のあらすじだけ見てもこの日本兵が波乱万丈の戦闘を潜り抜けたことがわかるが、映画はそれ以上である。先に見た「山本五十六」なんて目じゃないというものすごい物量作戦の大戦闘シーンにはしまいに、「もう戦争はいいです」と言いたくなった。戦争映画(戦闘映画)を見たい人には絶対に「山本五十六」よりもこちらをお奨めする。しかし、問題はカメラの落ち着きの無さ。1カットを短く切りすぎて落ち着かないうえに、画面が終始揺れているので疲れる。頭が痛くなるような映像にイライラさせられっぱなしで、いつになったら落ち着いた画面が見られるのかと祈るような気持ちで待っていたら、最後までこの調子だった。しかし、話はとにかく山場に次ぐ山場なので飽きない。

 それから、主役は日本兵ではなくチャン・ドンゴン扮する朝鮮人であるので、彼が素晴らしい人格者であることは言を俟たない。本作は日韓の友情物語、と言い換えてもいいが、人物の造形が余りに杜撰で、人間性にリアリティがない。日本軍の振る舞いもおよそ真実とは思いがたく、誇張が過ぎるのではなかろうか。シベリアの収容所で喧嘩ばかりしている捕虜というのも信じがたい。そんな元気があるはずなかろう?

 と、最後まで疑問符だらけだったけれど、とにかくすさまじいスケールで描かれているため、眠らずに見てしまった。

 本作には、いま反原発運動の闘士として名を馳せている山本太郎が日本兵として登場し、朝鮮人を思い切り虐める大悪党として憎憎しい演技を披露しているが、元々男前なのであんまり怖くない。「光の雨」の連合赤軍最高幹部森恒夫役のときのほうが怖かった。

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MY WAY
145分、韓国、2011
製作・監督・脚本: カン・ジェギュ、共同製作: キム・ヨンファ、音楽: イ・ドンジュン
出演: チャン・ドンゴンオダギリジョーファン・ビンビン、キム・イングォン、キム・ヒウォン、鶴見辰吾、山本太郎佐野史郎