吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

クリスマス・ストーリー

 スウェーデン人のベルイマン監督が好んで描きそうな題材を、フランス人監督が描くとなるほどこうなるのか、とその国民性の違いが歴然と現れて興味深い一作。もちろんこの二者の違いは個性の差なのだが、つい国民性かと思いたくなる。


 家族どうしの憎悪ほどやっかいなものはない。血のつながりは否定しようもなく、互いの嫌悪を隠そうが言い募ろうが、「血」は間違いなく存在の上にのしかかる。


 ある一家の物語は、その長男の早すぎる死、わずか8歳(だったか?)での葬儀の場面から。白血病で逝った長男の不在の現前が一家の上には永遠の影を落とす。骨髄移植しか助かる道はなかったのに、家族の誰もがドナーとして適合しなかったのだ。
 やがて年が経ち、一家の母が息子と同じ白血病に罹っていることが判明する。母は既に60歳を過ぎているが、今なお美しい。クリスマスには息子や娘一家が孫を連れてやってくるのが楽しみなおばあちゃんだ。母=ジュノンは、一族全員の検査を求め、自分に骨髄液を提供してくれるドナーを探していた。見つかった適合者は2人。一人は心を病む17歳の孫、もう一人は互いに嫌いあう次男アンリだった。

 一族の要は母ジュノンで、彼女のあけすけな台詞が一家の複雑な人間関係を表している。「息子でも、嫌いな息子と好きな息子がいるのよ」。母と息子の嫌悪、姉と弟の憎悪、一族の中の秘められた恋、さまざまな人間模様がクリスマスを前後に一気に見えてくる。


 深刻な家族劇であるにもかかわらず映画のタッチは軽快であり、アニメを使った説明やら、登場人物が突然カメラ目線で独白する画面やらとさまざまな手法を使って「異化効果」に余念がない。


 母ジュノンを中心点に置いた群像劇は、それぞれの事情が軽やかに描かれる。長い間秘めた恋も、心を病む少年の苦しみも、ごった煮のモチーフとして配置されている。着地点はどうつけるのか、と心配になるような拡散的な物語には、ついに着地点らしきものが見当たらない。家族の憎悪が消えてみなの絆が強まり、めでたしめでたし、と単純なお話にならないところがおフランスの諧謔か。(レンタルDVD)

UN CONTE DE NOEL
150分、フランス、2008
監督: アルノー・デプレシャン、製作:パスカル・コシュトゥー、脚本:アルノー・デプレシャン、エマニュエル・ブルデュー、音楽: グレゴワール・エッツェル
出演: カトリーヌ・ドヌーヴ、ジャン=ポール・ルシヨン、アンヌ・コンシニマチュー・アマルリックメルヴィル・プポー、イポリット・ジラルド、エマニュエル・ドゥヴォスキアラ・マストロヤンニ