吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル

 期待していたところは期待通り。期待していないところも期待通り(?)。


 劇場用パンフレットを見て、改めて前3作を振り返ってみた。ほとんど忘れているけれど、やはり最初のデパルマ監督作が印象深い。トム・クルーズが天井から吊り下げられるシーンの緊張感は歴代映画ベスト10に入るのではないか。今度のMI4でもこの場面にオマージュを捧げるような設定がある。

本作でのクライマックスはドバイの超高層ビル、ブルジュ・ハリファ=828メートルをトム・クルーズがぶら下がる一連のシークエンス。これ、ほんとうに本人が演じたらしいので、いったい保険金いくら掛けたんやろう、と余計なことが気になる。京都駅ビルのエスカレーターに乗るだけで足が震えるわたしのような人間には、あんなスタントを何億円積まれてもやる気は起きないが、トム・クルーズは自分でやってしまうのである。確かに超高層ビルを素手でよじ登るとか、ロープにぶら下がって人間振り子になって窓に突入するとか、見所満載なので、観客には面白いけど、やってるほうはほんとうに大変。撮影するのも大変。

 今回は、冒頭からのアクションシーンの連続、クライマックスのブルジュ・ハリファビルでのアクション、さらには砂嵐の中のカーチェイスなどなど、見所は満載で、最後の立体駐車場での立体パズルのような動きのある場面まで、アクションシーンについては文句なし。ただし、ストーリーはおざなりで、敵役の凄味やリアリティはほとんどない。どこかで見たことがあると思ったら、「ミレニアム」のミカエル・ニクヴィストが悪役の親玉ではないか。随分太ってしまって貫禄たっぷりであるが、敵としては物足りない。核テロリストという設定じたいは今やリアリティ満載かもしれないが、その目的や組織の実態など、ほとんど描写をすっ飛ばしているので、大人の知性に訴えるようなミステリアスな部分はない。

 要するにこの映画に何を期待するかによって評価は分かれるのだが、ひたすら派手で高さのあるアクションを見たい人には超お奨め。しかし、秘密兵器が次々繰り出されるところは007みたいだし、チームプレイの妙と頭脳を使ったIMFの働きが見たい人には不満だろう。わたしのように、アクションが連続すると退屈してしまう人間はつい途中で眠くなり…。少々寝てしまったではないか(~_~;)。

 トム・クルーズ演じるイーサン・ハントに妻がいることになっていたなんて、すっかり前作を忘れている。しかもその妻の話題が口の端に上るのだが、彼ら夫婦は既に一緒にいない。そのこともイーサンの表情の暗さの一因だろう。ま、最後にいろいろあるのでお楽しみ。トム・クルーズの「手裏剣ロボット走り」(勝手に命名)は笑える。そろそろアクションもしんどくなる歳なのによく鍛えています。

MISSION: IMPOSSIBLE - GHOST PROTOCOL
132分、アメリカ、2011
監督: ブラッド・バード、製作: トム・クルーズ、J・J・エイブラムス、ブライアン・バーク、脚本: ジョシュ・アッペルバウム、アンドレ・ネメック、クリストファー・マッカリー、音楽: マイケル・ジアッキノ
出演: トム・クルーズ、ジェレミー・レナー、サイモン・ペッグポーラ・パットンミカエル・ニクヴィスト、ウラジミール・マシコフ、レア・セドゥー