吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

1911

 期待していなかった分、とても面白かった。大河ドラマの総集編みたいだとかいう批判も読んだが、どうしてどうして、わたしにとっては充分面白かった。それは、中国近現代史のおさらいとして。

 社会の教科書や中国史の本や当時の新聞記事など、とにかく文字ベースでしか知らなかった辛亥革命を映像で見られたことがなによりの成果。ここまですさまじい戦闘だったとは、これでは「プライベート・ライアン」ではないか。考えてみれば内戦であろうが国と国との戦いであろうが、命をやりとりしているのだから、前線は悲惨なことになっているのは間違いない。

 5回も孫文を演じているというウィンストン・チャオ、やっぱりそっくりなので感心してしまった。

 黄興の妻になった徐宗漢はたいそう美しい人だが、革命軍の中では要するに「ハウスキーパー」だったようだ。日本共産党ハウスキーパー問題もあったように、この頃の女性活動家は家事サービスと性サービス担当者であり、結局のところ、男たちの革命の銃後を守るしかなかった。この映画ではそういった存在に異議申し立てをすることもなく、自由と解放を謳った革命でも女性は解放されていないことを暗黙裡に物語っている。もっとも、それは製作者たちが意図しない物語であろうが。

 無私無欲の人として描かれている孫文の理想とした社会が果たして実現したのかどうか、最後は中華共和帝国万々歳の国策映画になってしまっているところが笑ってしまうが、今の人民中国も孫文の志を継いだ子孫という自負があるなら、きちんと直接選挙による国政選挙ぐらいはしてもいいんじゃなかろうかね。 

 ところで本作も図書館映画である。本の虫と呼ばれた孫文は亡命先のアメリカ(?)で図書館に通っている。閲覧席で朝食のトーストを齧りながら新聞を読んでいるシーンがあるが、閲覧席で飲食可能だったのだろうか。
 

辛亥革命
122分、中国、2011
総監督:ジャッキー・チェン、監督:チャン・リー、脚本:ワン・シントン、チェン・バオグァン、音楽:ティン・ウェイ
出演:ジャッキー・チェン、リー・ビンビン、ウィンストン・チャオ、ジョアン・チェン、ジェイシー・チェン