吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

モンスター上司

 久しぶりに映画館で声を出して笑った。これほどばかばかしい映画も久しぶり。こういうのは気持ちいいわぁ〜。仕事に疲れた週末、一人で映画館でガハハと笑える幸せ。貴重なくつろぎ時間を1000円で堪能できるなら、わたしにとっては至福のときかもしれない。

 セクハラ、パワハラ、といった職場のいじめ、人権問題に真面目に厳しく取り組むため、この映画を見ようと…なぁ〜んて気持ちはぜぇ〜んぶ飛んでいく、とんでもなくふざけたお話。

 パワーハラスメントの権化のようなケビン・スペイシー。この人、地で演(や)っているんじゃないの? 部下をネチネチといたぶる意地の悪さは最高。セクハラ口腔外科医のジェニファー・アニストンなんて、やり過ぎでたまりません。こんなに卑猥な女医って存在するんだろうか? 彼女の台詞はどれもこれも口に出して言えない日本語。放送禁止用語を立て板に水のように流す美人歯医者って怖すぎる。そしておばかな社長、コリン・ファレル。彼が化学会社の二代目社長に就任した瞬間に社長室はアルサロと化し、公害垂れ流し企業へと変身する。

 この、どうしようもない上司3人にいたぶられている部下3人、ついに堪忍袋の緒が切れて復讐のために立ち上がる! しかし部下3人もやっぱり小心者のバカばかりなので、復讐のために思いついた殺人も自分たちではできずに殺し屋を雇うことにしたのだが…。果たして上手くいくのか、この復讐劇。

 久しぶりにアホ映画を見たのでちょっとすっとした。が、欲を言えば、ケビン・スペイシーのいたぶり方が物足りない。もっとネチコクいやらしく冷酷に部下を虐めるべきである。ジェニファー・アニストンはもう充分です、ご馳走様。コリン・ファレルの頭髪には笑ったけど、アホさかげんをもう少し加えてほしい。まあ、上映時間の短さから言えば仕方がないのかな。

 で、ここで社会派のわたくしに言わせると、上司への復讐のために殺人で溜飲を下げようなんていう発想はよろしくない。正々堂々と仕事で仕返しすべき。次はもう少し頭を使った復讐劇で笑わせてほしい。豪華な配役を無駄遣いといわれないためにも奮起を期す。

ところで、この映画の中で「ヒマラヤ杉に降る雪」という映画について言及されている。こんなオバカ映画のなかで「ヒマラヤ杉〜」のような静かな良品が取り上げられるとは場違いもいいところだけれど、ついでなので「ヒマラヤ」について、わたしのレビューはこちらをご高覧ください。http://d.hatena.ne.jp/ginyu/20020830

HORRIBLE BOSSES
98分、アメリカ、2011
監督:セス・ゴードン、製作: ブレット・ラトナーほか、製作総指揮:トビー・エメリッヒほか、脚本:マイケル・マーコウィッツ、ジョン・フランシス・デイリー、ジョナサン・ゴールドスタイン、音楽:クリストファー・レナーツ
出演:ジェイソン・ベイトマンチャーリー・デイジェイソン・サダイキスジェニファー・アニストンコリン・ファレルケヴィン・スペイシージェイミー・フォックスドナルド・サザーランド