吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ツリー・オブ・ライフ

 とある一家が珍しく家族全員4人で鑑賞。しかし誰一人として満足できなかった。以下はその4人の会話。Y太郎=20歳大学生。S次郎=18歳高校生

S次郎:うちの親父が出てきたからびっくりしたわ。殴られたことを思い出して気分悪い
Y太郎:(母に向かって)夫婦別姓などと気取っていてもしょせんは夫に支配されているんや、あの映画と同じやな、反省したらどうや
S次郎:やっぱり映画は娯楽やで。こんな難しい映画、何を言うてるのかわからへん。今度からは絶対に娯楽作しか見ないからな
Y太郎:父親が出張で家にいてないとわかったら子どもたちが大騒ぎで喜んでたな。うちと一緒や(笑)
父:あの宇宙の映像は全部ハッブル宇宙望遠鏡の映像をパクったものやな、オリジナリティがない。
S次郎:そういえば、馬の形してたのは馬頭形星雲か。
Y太郎:ショーン・ペンは何のために出てきたんや。この映画でまったく役に立ってないな。ショーン・ペンの無駄遣い。
母:確かに映像は凝ってるし綺麗だし音楽は美しいし。でもいったい何がいいたいのか、スケールが大きすぎて意味不明。
父:いったい何がテーマや。マクロの地球創造の話と家庭内のいざこざのミクロの話をつなぐものがない。
母:地球40億年の記憶を持った存在である人間。脈々と受け継いできたその生命の環も、19歳で命を落とすという理不尽によって断ち切られることもある、ということを言いたいわけよね。



 馬頭形星雲やガス星雲の美しさに魅了され、自然の美しさに心洗われる至極の時。ストーリーや台詞の一つ一つは詩のように流れ、ただわたしたち人間は「生かされている」ということを実感する2時間強。強く生きろと諭した父もやがては力を失う。神はどこにいるのかと問うことすらおこがましく、すべてを見通す超越者の存在に圧倒されてみよ、この映画で。
 しかし長い。その上退屈。映像美は確かにいいけれど、それなら「ニューワールド」のほうがはるかによかった。予告編のほうが出来がいいという作品の典型。

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THE TREE OF LIFE
138分、アメリカ、2011
監督・脚本: テレンス・マリック、製作: サラ・グリーン、製作総指揮: ドナルド・ローゼンフェルト、音楽: アレクサンドル・デスプラ
出演: ブラッド・ピットショーン・ペンジェシカ・チャステイン、フィオナ・ショウ、ハンター・マクラケン、ララミー・エップラー、タイ・シェリダン