吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

生き残るための3つの取引

 テンポいい犯罪映画。テンポがよすぎて最初のうち、登場人物の名前と顔と人間関係が全然把握できなくて難儀した。
 巻頭のテンポのよさは最後まで持続し、サクサク切った編集は、悪いやつしか登場しないこの映画をトントンと進めていく馬力がある。

 主役は犯人を捏造する刑事らしいのだが、登場する悪人全員が主役といえる一種の群像劇で、悪の三すくみ状態で権力犯罪が進行する。出世をちらつかせられるとついつい犯人捏造証拠隠滅に手を染める気弱な刑事。その刑事の弱みを握り、自らも企業と癒着して汚職に走る検事。欲の権化であり裏社会の人間でもある企業家は刑事を脅し検事を買収する。彼らの悪事が次々と露呈しかかっては糊塗され、互いの腹を探り合っては騙しあい、取引を重ねる。こうして泥沼の悪事はとどまるところを知らぬ深みへと。 

 韓国は日本よりはるかに競争が激しい弱肉強食の社会だ。その醜さを滑稽なまでに描いた露悪的作品。登場人物がみな下品で暴力的、誰にも同情などできない。韓国では主役の刑事に同情が集まったというが、わたしはちっともそんな気にはなれなかった。とはいえ、二転三転するストーリーの面白さに引っ張られて最後まで一気に見てしまう、という作品だ。最後は無常感が漂う皮肉な結末。けっこうお奨め。

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BAD DEAL
119分,韓国,2010
監督: リュ・スンワン,脚本: パク・フンジョン,撮影: チョン・ジョンフン,音楽: チョ・ヨンウク
出演: ファン・ジョンミン,リュ・スンボム,ユ・ヘジン,チョン・ホジン