吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

戦火のナージャ

 前作「太陽に灼かれて」とは打って変わった作風の、戦争アクション映画。150分の長さを感じさせない出来。

 超愛らしかったナージャがどんな美人に成長したかと楽しみにしていたら、田舎の芋姉ちゃんふうになっていたのでがっかり。でもよく見ると愛らしくて親しみのわく顔ではある。

 前作とほとんど同じ俳優で演じさせた、その後のコトフ一家を描く。なんと、前作で全員死んだはずの一家が実はみな生きていたという、ウルトラそんなんありかい設定で物語は始まる。

 舞台は1941年と1943年を行き来しつつ、描かれる。1941年は独ソ戦開始の年、1943年はスターリングラードの戦いでソ連軍がドイツ軍を粉砕した年である。粛清によって処刑されたはずの革命の英雄コトフ大佐が生きていることを知ったスターリンは、1943年、KGBのドミートリ大佐にコトフの捜索を命じる。ドミートリは1941年に遡って、強制収容所に収監されていたコトフ大佐の行方を調べる。

 一方、コトフ大佐の妻子はドミートリに密かに匿まわれていた。ドミートリは恋敵であったコトフを粛清のどさくさに紛れて抹殺したはずだったが、愛するコトフ夫人マルージャとその娘ナージャは殺すわけにはいかない。ナージャもまた、父が生きていることを知ってしまう。かくして、離れ離れになっていた父と娘の、互いを求める戦火の旅が始まる。


 悲惨な戦場、スターリンの大粛清、離れ離れの父娘、という戦争ドラマの王道を行く物語は目を離せない面白さ。戦争と粛清の不条理劇は血みどろの凄惨な場面すらどこかしら諧謔に包まれ、ミハルコフ監督の醒めた人間観が垣間見える。と同時に、ラストシーンで描かれる若い兵士と従軍看護婦ナージャとの触れ合いには、哀切さに身も捩れそうな思い。ところどろこに挿入される「太陽に灼かれて」での親娘の幻影のように美しい場面が悲劇性をいや増す。このように、本作はかなり情緒的な作りになっているため、哀切のロシア民謡を聞くような風情がある。

 役者について言えば、スターリン役の俳優がとてもよく似ている。日本ならさしずめ岡田真澄が演じるところなんだけど、ちょっとでぶり気味のスターリンをとてもいやらしく演じていてよかった。巻頭、スターリンを揶揄する場面がたいそう面白い。
 ドミートリ役のオレグ・メンシコフが何度見ても「新スタートレック」のデータにしか見えないのはわたし一人でせうか…。Y太郎と二人、ひたすら「あのナージャがどれほど美しくなったか」を期待して劇場まで行ったのに、二人とも映画が終わったら開口一番、「ナージャ、不細工やったな」。

 それでもなお、続編に期待が湧く。この第2作はシリアスな内容にもかかわらずユーモアもあり、波乱万丈の物語はアドベンチャー的にも面白かったので、お奨め。しかしあの退屈な第1作を見ていなくては本作は全然理解できないから、そこがつらいところか。第3作もぜひ見なくては。

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UTOMLYONNYE SOLNTSEM 2
150分、ロシア、2010
製作・監督・脚本: ニキータ・ミハルコフ、製作:レオニド・ヴェレシュチャギン、共同脚本: アレクサンドル・ノヴォトツキイ=ヴラソフ、ウラジーミル・モイセエン、音楽: エドゥアルド・アルテミエフ
出演: ニキータ・ミハルコフナージャ・ミハルコフ、オレグ・メンシコフ、ヴィクトリア・トルストガノヴァ、セルゲイ・マコヴェツキー