吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

ソウル・キッチン

 アキン監督の作品ではいちばん気に入っている。


 ハンブルグの港に面した倉庫を改造した大衆食堂を経営するギリシャ移民二世のジノスという青年を主人公とする、ハートフルで愉快で喧しくも音楽が気持ちのいい爽快な映画。

 ジノスが経営する食堂は、味にうるさくない常連客相手にそこそこ流行っているのだが、税務署からの滞納税金督促状が届けられてピンチに陥る。おまけにぎっくり腰になって、その上、刑務所から出所したばかりのチンケなヤクザである兄が「雇ってくれよ」と転がり込み、恋人は新しい仕事を見つけて上海に旅立ってしまい、ジノスの周りには難題が山積する。でも世の中、捨てたもんではありません。職人根性が災いしてレストランを首になったシェフと偶然知り合い、食堂に迎え入れて起死回生を計ることに。


 ジノスの周囲で起きるさまざまな出来事がハイペースで小気味よく描かれる。新しいシェフの料理は手が込みすぎて大衆には受けない。頭を抱えるジノスだが、それも最初のうちだけで、やがてあれよあれよという間に商売は上手く回り始める。が、そこに今度は新たに彼の店を狙う不動産屋が現れる。次から次に難問が押し寄せるジノスの店だが、店は毎晩音楽が鳴り響き、ライブハウスのようなけたたましさと熱気に溢れる。一難去ってまた一難のジノスの日々だが、彼の持ち前の明るさとバイタリティがあれば、怖いものなし! キャラクターの立ちすぎている人間ばかりが集まるソウル・キッチンで、今夜も熱狂のライブが始まったぁ!


 という、とても楽しい映画。アキン監督の作品には彼自身の出自である移民問題が色濃く反映されているのだが、本作ではその移民問題が吹っ切れたかのような明るさを見せる。これまでの作品にあった、出身地と現在の故郷とに引き裂かれた者の切なさや葛藤のほの暗さが姿を消し、移民のバイタリティが前面に押し出される。ジノスがギリシャ移民であるのに対して、彼の金髪の恋人が上海へと移出していくという対比が面白い。世界はグローバリゼーションが進み、カオスが進展している。ジノスの店はカオスの骨頂だ。

 
 愉快痛快なこんな映画を見て、湿った気持ちを吹き飛ばすのも一興。今はこういう明るい映画が救いになる。

                                            • -

SOUL KITCHEN
99分、ドイツ/フランス/イタリア、2009
製作・監督・脚本: ファティ・アキン、製作: クラウス・メック、脚本: アダム・ボウスドウコス
出演: アダム・ボウスドウコス、モーリッツ・ブライブトロイ、ビロル・ユーネル、ウド・キア、アンナ・ベデルケ、フェリーネ・ロッガン