吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

大河のうた

 第一話「大地のうた」に比べると画面がはるかに美しく陰影に富んでいて、物語も面白い。田舎の風景を古いモノクロ映像で見ると見苦しいということに気づいてしまった。

 第2話では貧しき一家はガンジス川沿いのスラムに移り住む。町の風景のほうがはるかにモノクロ映像的には綺麗。なので、第2話ではしゃきっと目が覚める。


 ガンジス川沿いの人々の暮らしが珍しくてやっぱり目を引く。これはエキゾチックな映画だ。インド人には何も珍しくもない風景かもしれないが、現代の日本人が見ると目を見張るような面白い光景が繰り広げられている。川辺で筋トレする男とか、寺院に住み着く猿たちの行動とか、細部が面白くて目を奪われる。とはいえ、やっぱりお話は相変わらず「貧しき人々」。どんどん一家の生活は苦しくなり、とうとう年老いたおじの田舎暮らしの家へ引っ越すこととなる。このあたりでやっと本作の主人公がこの一家の長男オプーであることが判明した。わたしはずっとオプーの母親が主人公だと思っていた。それくらい、肝っ玉母さんが偉いのだ。美しい母は懸命に働いて子どもたちを育てている。夫である僧侶は教育を受けたインテリなのに(インテリだからか)ちっとも働こうとせず、詩を書いて日なが暮らしているような生活力のない人間だ。その父は、ガンジス川のほとりで歌うような旋律の説教を人々に施しているうちに肺炎を起こして死んでしまう。 

 生活に窮した母とオプー少年は叔父さんの力添えで田舎に引っ越す。流転のオプー一家に光はあるのだろうか。学業成績優秀なオプーは奨学金をもらって大学に進学することができた。しかしその矢先、再び悲劇が訪れる。というわけで第3話「大樹のうた」に続く。でもやっぱり後半はだんだん眠くなって最後は寝ているうちに終わってしまった。

APARAJITO
110分、インド、1956
監督・脚本: サタジット・レイ、原作: ビブーティ・ブーション・バナージ、撮影: スプラタ・ミットラ、音楽: ラヴィ・シャンカール
出演: ピナキ・セン・グプタ、スマラン・ゴーシャル、コルナ・バナルジー、カヌ・バナルジー