吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

はなればなれに

 で、気を取り直してゴダール2本目はほとんど眠らずしっかり見ていた。何しろ「勝手にしやがれ」でたっぷり睡眠をとったから、2本目は大丈夫。


 相変わらず、ゴダールらしい即興的な演出、人を食ったようなナレーション、要するにそれまでの映画文法をぶち壊したい、というエネルギーに溢れた作品だ。しかしこれが今見て面白いかというとちょっと疑問。ところどころではっとする場面があったり、楽しめるのだが、全体としては細切れの話がだらだらと続くだけで、しかも登場人物3人の妙な三角関係が理解不能。


 楽しめるシーンというのはもちろんカフェでの三人のダンスと、ルーブル美術館を疾走する場面。ルーブルのシーンはベルトルッチが「ドリーマーズ」(2003年)で再現した。おかしな三角関係といえばトリュフォーの「突然炎のごとく」(1961年)のほうが先に作られている。理解不能な三角関係とか、心理の自然な流れを逸脱したストーリー展開とかがヌーベル・ヴァーグらしいのだろうか。この当時見て斬新さがあったかもしれないが、今見たら単に独りよがりでわけがわからない映画、としか見えなかったりする。でもほとんど眠らずに見たから、それなりに面白かったのかも。と、わたしの感想も訳が分かりません。ちなみにゴダール自身は『映画史』のなかで本作を失敗作だと述べている。


 ゴダールのミューズ、アンナ・カリーナが終始神経質そうな暗い表情でいるのがアンニュイな感じでいい雰囲気なのだが、最後に幸せそうに笑ったりなんかしている場面が妙に浮いている。シュールというべきか。このナンセンスぶりがいかにもヌーベル・ヴァーグなのだが、しっくりこない。やっぱりゴダールは「気狂いピエロ」が最高傑作ですな。

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BANDE A PART
96分、フランス、1964
監督・脚本: ジャン=リュック・ゴダール、原作: ドロレス・ヒッチェンズ、音楽: ミシェル・ルグラン
出演: アンナ・カリーナ、サミー・フレイ、クロード・ブラッスール、ルイーザ・コルペイン