吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

ザ・タウン

 物語の舞台はボストンの「タウン」と呼ばれる犯罪地域、チャールズ・タウン。巻頭、全米一銀行強盗と現金輸送車襲撃事件が多い街だというテロップが流れる。そしてあっという間に銀行強盗事件が起きる。実に鮮やかな手際で銀行を襲撃した4人組は女性支店長クレアを人質にとって銀行から逃げる。4人組のリーダーはダグ(ベン・アフレック)という若者。仲間のジェム(ジェレミー・レナー)は冷酷な男で、殺人もいとわないが、ダグは流血を嫌う。クレアを解放した彼らは、奪った免許証の住所を見てクレアが自分たちと同じタウンに住んでいることを知り、自分たちを知っているかもしれないと危惧する。ダグはクレアを監視して彼女から強盗事件について聞き出すためにクレアに近づく。クレアはダグが覆面強盗の一味だとは夢にも気づかず、彼らは恋に落ちてしまう。強盗から足を洗いクレアと生き直したいと願うダグだったが、彼らの黒幕の親分も仲間のジェムもそれを許さない。やむなく、最後の強盗のつもりでダグはレッドソックスのスタジアム売り上げ金を強奪する計画に手を染める。FBI捜査官フローリー(ジョン・ハム)の捜査の手がダグたちに迫る…。


 男3人ががっぷり組み、演技の火花を散らす。プロットには目新しさはないが、きびきびした演出と、役者の鬼気迫る演技力でぐいぐい引っ張る。切れる暴力男ジェムを演じたジェレミー・レナーはアカデミー賞の助演男優賞にノミネートされていて、これは獲れるんじゃないかと思わせるほど怖い。出番は少ないけれど、ダグの父親役で登場したクリス・クーパーとか強盗団の黒幕ピート・ポスルスウェイト(先ごろ亡くなった。惜しい)もさすがの貫禄。


 悪の道から抜け出したいと願う若者の思いは虚しく散ってしまうのか、そう簡単には足を洗うことができないダグは苦しむ。悪いやつとはいえ、ジェムたちとの友情も捨てられない。ジェムはダグにとってかけがえのない友達なのだ。彼らはタウンに生まれ育ったばかりに親から強盗の家業を受け継ぐ。この街にいる限り、貧困とドラッグと犯罪からは手を切れないのだ。

 クレアにダグの正体がばれるのではないかと冷や冷やさせる場面といい、ジェムにすごまれる場面、黒幕に脅しをかけられる場面、どれもこれも緊迫感が漲る。クライマックスの銃撃シーンなどはありえないほど銃弾が飛び交うし、お約束のカーチェイスも万全だ。


 日本では劇場未公開となったベン・アフレック監督第1作「ゴーン・ベイビーゴーン」http://d.hatena.ne.jp/ginyu/20090213に比べてはるかに娯楽性が増した本作は、ベン・アフレック自らが主演して鍛え抜かれた身体を披露する。前作のほうが思想的な深みはあるが、この「ザ・タウン」のほうが一般受けはするだろう。いずれにしてもベン・アフレックは監督として相当な腕前を持っているといえる。役者よりも監督に集中するほうがいいのでは。


 犯罪社会からの再生をかけたダグと、彼を追うFBIの手に汗握る攻防戦も見ごたえあり、生き直しには大きな犠牲が必要であることを痛感させられる。前作で善と悪の葛藤を描いたベン・アフレックが、本作でもやはり善悪が渾然となった世界を描き出している。前作で空撮を効果的に使ったベン・アフレック、本作でも空撮をうまく使って、高級住宅街、ハーバード大学などがひしめく文教地区からチャールズタウンという下町へとボストンの街並を舐めるように描く。この技もさりげないけれど見逃せない。
 

 伏線がいくつも張られているので、ちょっとした台詞も聞き逃さず見逃さず、しっかり見る必要あり。お奨め作。


 以下、ややネタばれ。





 本作を見た夫が「ショーシャンクの空に」を見たあとのような気分だと言うので、わたしと長男Y太郎は思わず顔を見合わせた。さて本作、ショーシャンクに似ているか否や。

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THE TOWN
125分、アメリカ、2010
監督: ベン・アフレック、製作: グレアム・キング、ベイジル・イヴァニク、原作: チャック・ホーガン 『強盗こそ、われらが宿命』、脚本: ベン・アフレック、ピーター・クレイグ、アーロン・ストッカード、撮影: ロバート・エルスウィット、音楽: デヴィッド・バックリー、ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
出演: ベン・アフレックジョン・ハムレベッカ・ホールブレイク・ライヴリー、ジェレミー・レナー、ピート・ポスルスウェイト