吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

おつむて・ん・て・ん・クリニック

 面白すぎる。

 どういうわけか珍しくS次郎と一緒にDVD鑑賞。30分ほど経ったところでSが「これってコメディ?」とお間抜けな質問を。「あんだけさんざん笑っておいて、コメディかどうかわかれへんの?!」と母は絶句したのであった。


 コメディかどうかわからないというほど、実はシリアスなドラマなのである(嘘)。というか、精神科医を演じたリチャード・ドレイファスのシリアス演技が真に迫っているのである。患者につきまとわれて困惑し、ついには切れてしまう気の毒なお医者さまがリチャード・ドレイファス。彼が真剣になればなるほど観客は大笑い。ずうずうしくつきまとうビル・マーレイのお茶目ぶりもいやらしく、加害者=ビル・マーレイと被害者=リチャード・ドレイファスの両方に感情移入出来ぬまま、というか、双方に対して観客は冷めた目で笑いを注ぐことができる、非常によくできたコメディ。


 つきまとう患者も付きまとわれる精神科医もどちらも性格がよろしくないから、観客はどちらかに肩入れなどしない。とはいえ、やはり気の毒なのはお医者様であり。この医者が俗物なのがうんざりで、マスコミにデビューして本を売り込みたいとか有名になりたいとか、そういう欲にまみれているものだから、欲望の隙をビル・マーレイ患者につけこまれる。


 精神科医の家族がまたなんともナイーブというかカマトトっぽいというか、人が言いといえばいいのか、彼らがこの映画の救いになっている。


 こういう、迷惑人間や上昇志向の強い俗物は世の中にいくらでもいそうだ。どたばたコメディなのにそのあたりのリアルさが受ける。よく笑わせてもらいました。しかしこの邦題、なんとかならんのか。(レンタルDVD)

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WHAT ABOUT BOB?
99分、アメリカ、1991
監督: フランク・オズ、製作: ローラ・ジスキン、原作: ローラ・ジスキン、アルヴィン・サージェント、脚本: トム・シュルマン、音楽: マイルズ・グッドマン
出演: ビル・マーレイリチャード・ドレイファス、ジュリー・ハガティ、チャーリー・コースモー