吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ロビン・フッド

 金がかかっていることをまざまざと実感する作品。これは絶対劇場で見るべき。

 リドリー・スコットの史劇では、「キングダム・オブ・ヘブン」に続く十字軍遠征ものである。かの有名な「義賊」ロビン・フッドを描くわけだが、ロビンが英雄になるまでのお話なので、最後が「え? これで終わり?」と思わせる。Y太郎は「これ、続編ができるよなぁ。絶対に続編作る気やな」と興奮していた。

 ストーリー展開やドラマ部分はほとんど期待していなかったので、別に話がホイホイ進んでもそれは気にならない。巻頭の城攻めシーンの迫力や、なんといっても最後のドーバー海峡での決戦シーンの血沸き肉踊る躍動感には感動した。ハンパではないセットの作りこみ、空撮、細かな美術、すべてが素晴らしい。クライマックス、浜辺の壮絶な英仏軍の戦いは「プライベート・ライアン」そのままだ。両者には700年の隔たりがあるにもかかわらず、その戦闘のスケール感は同じ。
 

 この映画では「自由のために闘う諸侯」が描かれるし、ロビン・フッドももちろん自由の戦士なのだが、ここでいうところの自由とは人民の自由ではなく、国王に対する貴族の自由である。そう、かの有名なマグナ・カルタのこと。先ごろから、岩波書店のシリーズ『自由への問い』を読んでいて、「自由と平等」というときの自由とはなんぞや、という歴史的疑問がふつふつとわいているため、そういう興味を想起しながら見た。

 いまさらのように自由について問う史劇をリドリー・スコットが撮ったというのは、何を意味するのだろうか。わたしたちは自由がふんだんにある時代に生きていると思っているが、果たしてそれはいかがなものか? 奴隷の自由を享受することにあまりにも慣れっこになってしまったら、もはや自由すら求めることはないだろうに。

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ROBIN HOOD
140分、アメリカ/イギリス、2010
監督・製作: リドリー・スコット、製作: ブライアン・グレイザーラッセル・クロウ、製作総指揮: チャールズ・J・D・シュリッセルほか、原案: ブライアン・ヘルゲランド、イーサン・リーフ、サイラス・ヴォリス、脚本: ブライアン・ヘルゲランド、撮影: ジョン・マシソン、音楽: マルク・ストライテンフェルト
出演: ラッセル・クロウケイト・ブランシェットマーク・ストロングウィリアム・ハートマーク・アディマックス・フォン・シドー