吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

ファイナル・ソルジャー

 劇場未公開なのも頷ける、完成度の低さが気になる作品。ストーリーが自然に流れない。展開が急だったり説得力に欠けたり、演出にも迷いが見られる。
 とはいえ、ニュージーランドとイギリスの合作でこのような映画が作られることが、先住民と侵略者の和解への道しるべとなることは歓迎したい。個人的には大変惹かれる素材であり、マオリ族とアイルランド人との間で揺れるサラの気持ち、二つの祖国、二つの愛、しかし息子へのただ一つの愛、という3つの愛によって翻弄される女性の運命を手に汗握って見つめていた。息子へのただ一つの愛すらも、揺らぐ瞬間が印象深い。息子に向けた銃口。本気で撃とうと思ったというサラの絶望と憎悪がまた、母というものの我執を表している。6歳のときにマオリ族にさらわれた息子を7年後にやっと見つけた。しかし、その息子は母が望むような生き方を選ばない。そのとき、母は絶望にかられる…。


 1854年、サラはマオリ族の男を愛して身ごもった。その男はあっという間に病死し、生まれた息子は6歳のときに彼自身の祖父に掠われ、マオリ人として育つ。サラは軍医であった父から医学の教えを受け、軍医として最前線に留まる。行方不明の息子を捜すという執念に取り憑かれていたのだ。サラを愛するスコットランド人もいたのに(キーファー・サザーランド! たまには善人の役も演じます(笑))、彼女はただひたすら息子を見つけることだけを考えていた。イギリス軍の開拓は奥地まで進み、マオリ族の激しい抵抗ももはや最後の戦いとなる日は近かった…


 ニュージーランドの川、その蛇行しながら光る幻想的な美しさには息をのむ。深い緑の川の色とさらに深い緑のそそり立つ川岸の風景は、大きなスクリーンで見たかったと歯ぎしりしたくなるほど素晴らしい。原題は”RIVER QUEEN”。サラたちが乗る船の名前であり、サラ自身のことでもあるが、まさに川こそがこの映画の王者だ。邦題はまったく映画の内容を的確に表さない。本作は兵士の物語ではなく、抑圧者と抵抗者の間で引き裂かれた生を生きることを余儀なくされ、しかし、最後は自らの意志で生き方を選んだ女性の物語だ。

 
 脚本がもっと練られていたら名作と呼ばれる作品になったかもしれないのに、惜しい。


 そうそう、「インビクタス」でマオリ族の踊りをやっていた彼が出演している。(レンタルDVD)

RIVER QUEEN
113分、ニュージーランド/イギリス、2005
監督: ヴィンセント・ウォード、脚本: ヴィンセント・ウォード、トー・フレイザー、撮影: アラン・ボリンジャー、音楽: カール・ジェンキンズ
出演: キーファー・サザーランドサマンサ・モートンクリフ・カーティス、テムエラ・モリソン、スティーヴン・レイ、アントン・レッサー、ダニエル・コーマック