吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

遠距離恋愛 彼女の決断

 NYのレコード会社勤務のギャレットとサンフランシスコの新聞社勤務のエリン。この二人の遠距離恋愛は果たしてうまくいくのだろうか? 二人の距離を埋める解決策はあるのか。


 下ネタ満載の爆笑ラブコメ。かなり面白かったのだが、ドリュー・バリモアは劣化が著しく、この映画がかろうじてラブコメの主役を張れる最後の作品かも、と思わせる。


 物語は二人がNYで出会ってたちまち恋に落ち、その様子を面白おかしく見守るギャレットの友人、冴えない中年男二人が脇を飾ってとても楽しいアンサンブルを見せる。エリンはやっとつかみかけた新聞記者としてのキャリアを手放したくないし、かといってギャレットにそうそううまく転職の話もない。斜陽産業の新聞業界が背景になっているところが厳しい雇用情勢を反映しており、コメディにしてはリアルな描写に胸が痛む。 

 この作品は、「そもそも遠距離恋愛はうまくいかない」ということを前提にしている。二人は離れていてはならないし、一緒に暮らさなければ愛は育めない、ということが暗黙の前提にある。だから主人公二人は離れていることに悶々とする。その気持ちはわかるが、なぜ恋愛に距離があるとうまくいかないのだろうか。こういう設定なら、むしろ「遠距離恋愛を続かせるコツ」みたいな展開になったほうが、現実の遠距離恋愛者たちの参考になってよかったのに。

 そもそも今のようにネット社会が進展すると、遠距離どころか「未見恋愛」も生まれるだろうし、リアルに逢えなくても恋愛は可能なのか、という人間のコミュニケーションの有り方に根本的な問いを立てる展開のほうが現代的でよかったのではないか。

 とはいえ、この映画、とても楽しくてわたしは十分楽しめました。

 エリンの姉がまたあけすけに夫婦のセックスを話題にしたりする女性で、エリンとの会話がラストにつながる伏線となっているのでお楽しみに。

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GOING THE DISTANCE
103分、アメリカ、2010
監督: ナネット・バースタイン、製作: アダム・シャンクマンほか、脚本: ジェフ・ラ・チューリップ、音楽: マイケル・ダナ
出演: ドリュー・バリモアジャスティン・ロングチャーリー・デイジェイソン・サダイキス