吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

ホームレス・ワールドカップ

 この映画の公式サイトによると、全世界のホームレスは推定10億人だそうだ。
 映画のタイトルを初めて見たとき、冗談かと思っていたが、これはコメディ映画などではなく、れっきとしたドキュメンタリーだった。以下、公式サイトを引用。

2001年に発案され、2003年に初めて開催された“ホームレス・ワールドカップ”。それはスポーツを通して全世界のホームレスの人々に、生活を変えるチャンスを与えた。わずか3年後の2006年には、世界各国で2万人ものホームレスたちがストリートサッカーチームに所属し、その年のケープタウン大会には、48の国々を代表する500人もの選手が出場した。
本作は、そのうち7人の選手たちがサッカーで生きる希望を見出し、“ホームレス・ワールドカップ”のピッチでヒーローになることで、それぞれの状況を脱出する方法を探し出す日々を記録している。またナビゲーターとして登場するハリウッド俳優コリン・ファレルが、世界のホームレスの現状や彼らの抱える様々な問題を観る者に訴えかける。

今年の夏、テレビを見ないわたしでさえ、あのブブゼラの音には悩まされた。わたしが見なくても家族は(特にYが)サッカー大好きだから、ずっとワールドカップを見ている。やっとブブゼラから解放されたと思ったら、意外なところでまたあの音を聞いた。それが、本作である。

2010年、ブラジルのリオで第8回を迎えるこの大会は、2003年から毎年開催されているホームレスの人のみが参加できるミニサッカーの世界大会です。……“ホームレス・ワールドカップ”に出場できるのは一人一回まで。その一回のチャンスにかけて精一杯取り組むことができるのも、この大会の特徴です。NIKEUEFA欧州サッカー連盟)が大会の公式スポンサーとなり、世界的に有名なサッカーチームが支援を表明しています。……

 驚いたのは、上記にあるとおり、ピッチが極めて狭い、ミニサッカーであったこと。バスケットのコートよりも狭く見えるぐらい小さなところで選手が走り回るその姿は闘鶏場を思い出させる。ホームレス・ワールドカップのことを知らなかったのは、日本が出場していないからだろうと思っていたが、なんと、

ホームレスの自立を応援する団体“ビッグイシュー”や企業、市民などにサポートされながら2004年のイェーテボリ大会(スウェーデン)に日本代表チームが初参加しました。2009年ミラノ大会では“野武士ジャパン”の名のもとに2回目の参加を果たしました。現在はNPO法人ビッグイシュー基金のサポートでサッカークラブが大阪と東京で練習を続けています。イェーテボリ大会に参加した日本チームは、大会出場をきっかけに8人中7人がビッグイシュー販売の仕事から住居を得て新しい仕事につきました。

 ということらしい。日本選手の話は映画の中には登場しないので、公式サイトによって初めて知った。スペインなど、チームによっては60歳を超える選手もいたり、中高年サッカーチームと化しているのもある。そして、感情を抑制できなかったり、アルコール依存症だったり、いろいろ問題のある選手もいる。しかし、彼らが練習と試合を通してチームプレイを覚えていく姿はまさに感動的だ。


 試合の合間に各国の選手からインタビューする内容を見ていると、彼らの複雑な政治・経済状況が浮かび上がる。アフガニスタンでは、タリバン政権時代、サッカー遊びをするのも命がけだったという。見張りを立てて、タリバンが見ていないところでこっそりボールを蹴っていたというのだから、すさまじい話だ。見つかれば公開処刑されてしまうという。


 残念ながら試合自体に迫力がないのと、「知らないことを知る驚き」という感動以上のものを期待するとちょっとがっかりするかもしれない。ホームレスの人々を生む社会状況や、サッカー以後の彼らの人生について追ってくれればなお素晴らしいドキュメンタリーになったと思う。とはいえ、この映画はもっと多くの人に見てほしいし、日本の状況をぜひ映画化してほしいものだ。そういえば、10月1日に西梅田駅でビッグイシューの常設店が開店した。エールを送りたい。(レンタルDVD)

KICKING IT
99分、アメリカ、2009
監督: スーザン・コッホ、ジェフ・ワーナー
ナレーション: コリン・ファレル