吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

ゴッドファーザー

 午前十時の映画祭http://asa10.eiga.com/にて。先週、「戦場にかける橋」を見るはずだったのに、電車が1時間も遅延して、見逃してしまった。実に悔しいが仕方がない、そこで今週はそのリベンジ。またしても長男Y太郎と一緒に鑑賞。


 本作は、同族経営の中小企業の経営承継はいかにあるべきか、というモデルケースを描いた作品。創業者が名を成し、それなりの成功を得たあと、二代目は誰が継ぎ、どう舵を取るべきか。とりわけ、一族の結束が固い移民労働者の世界にあっては、経営承継がうまくいくかどうかはファミリー全体の盛衰がかかる一大事である。大阪に出て成功した近江商人しかり、朝鮮半島出身の在日の経営者しかり。
 産業スパイはどのように生まれ、それを摘発するにはどのような罠をしかければいいのか。身内の裏切り者をいち早く見つける方法は? 相手を泳がせ、浮き上がってくるところを叩く。スターリンの粛清や毛沢東の手練手管を見るようではないか。

 というわけで、本作はイタリア系マフィアのヤクザ世界を描きつつ、同族経営の企業主たちに大いに警鐘と教訓をもたらした作品である(はず)。


 もともとヤクザ映画が好きでないわたしだが、この映画は面白かった。とはいえ、やっぱり一番好きなヤクザ映画は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」である。映画を見終わった後、何度も何度もYが「これ、面白かったか? パート2はもっと面白いし、『仁義なき戦い』はさらにもっと面白いぞ」と繰り返していた。


 本作が日本で初公開されたとき、わたしは中学生。ニーノ・ロータは映画を見ずにホイホイと作曲してアカデミー賞を獲ったとか、こんなヤクザ映画は今までなかったとか随分評判になっていた映画だが、血みどろの抗争ものと聞いて怖気づき、見に行かなかった。そしていまや伝説ともなっているギャング映画の金字塔である。いまさらストーリーテリングの卓抜さを云々しても、カメラの巧みさを褒め称えても、重厚な絵を賞賛しても、マーロン・ブランドアル・パチーノの演技力を絶賛しても既に誰かがどこかで言い尽くしていることだろう。

 なので、わたしが何よりも感動したことを書いておこう。よく知っている役者たちが誰も彼も若い! ダイアン・キートンなんて、最初誰だかわからなかった。随分愛らしいダイアンだが、彼女は年取ってからのほうが色気があって美しい。アル・パチーノの男前ぶりにもうっとり。当時から既に今のダミ声化が始まっていたのか。ドン・コルレオーネ一家の相談役弁護士、どこかで見たことがあるとずっと気になって気になってしかたがなかったのだが、エンドクレジットを見て「あっ、ロバート・デュバルであったか!」と絶句。そうだった、デュバルの若いころはこんなにドイツ人っぽかったのだ。


 緩急自在の演出や、明暗の切り替えが鮮烈な画面展開、人間性の裏面に迫る描写、いくつもの伏線、こんなに面白い映画だと今まで知らなかったのはうかつであった。とりわけ、二代目に就任する末弟マイケルの豹変振り、成長とともに冷酷になる、ドンとしての器の大きさを見せる人物造型に興味を引かれた。こうなると絶対にパート2も劇場で見たい。

THE GODFATHER
175分、アメリカ、1972
監督・脚本: フランシス・フォード・コッポラ、製作: アルバート・S・ラディ、ロバート・エヴァンス、原作・脚本: マリオ・プーゾ、音楽: ニーノ・ロータ
出演: マーロン・ブランドアル・パチーノジェームズ・カーン、ジョン・カザール、ダイアン・キートンロバート・デュヴァル、 リチャード・カステラーノ、タリア・シャイア