吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

サブウェイ123 激突

 デンゼル・ワシントンジョン・トラボルタは同い年、1954年生まれであります。中年二人ががっぷり四つに組んだ会話劇。もちろん血みどろアクションではあるのだけれど、白眉はアクションよりもこの二人の絶妙の会話にある。トラボルタがはまり役の悪人を演じているんだけれど、よくよく見るとこの人は目がとっても優しそうで善良なので、実は「ほんとはあんまり悪い人じゃないんでは…」と思わせてしまう。


 正体不明の男達がニューヨークの地下鉄を乗っ取る。彼らは乗客を人質に1000万ドルをNY市長に要求。1時間以内に現金で用意しないと人質を殺すと脅す。犯人ライダーからの無線連絡を偶然受け取ったのは列車運行係のウォルター・ガーバー。用意周到な犯人のはずだがやたら切れやすいライダーに対し、終始沈着な対応を見せるガーバー。映画はこの二人の丁々発止の会話劇を中心にスリリングに進む。トニー・スコット流のハイテンションでスタイリッシュなカメラワークがスピーディに冴える。
 しかし、どうやら身代金以外のところに本当の狙いがあるらしい犯人ライダーのキャラクターがどうも判然としない。これほどの大胆な犯罪を計画的に実行する人間があのようにやたら凶暴で瞬間湯沸かし器ということがありえるだろうか? それに、人質がビデオチャットをしている現場が犯人たちに見つかるかどうかとハラハラさせながら、結局なんということも起きないというのも解せない。


 まあ、細かいことを言えばいくらでもツッコミどころがありそうだけれど、演出がてきぱきしているので、見ている間はあまり気にならなかった。ガーバーの弱みがこの映画の中で露見するところがスリリングかつほろりとさせる場面であるが、その設定にしても何かどんでん返しがあるのかと思ったけれどそういうわけでもなく、わりと素直に話が進んでしまったのがひねり足りないところか。

THE TAKING OF PELHAM 1 2 3
105分,アメリカ,2009
製作・監督: トニー・スコット,製作: トッド・ブラックほか、製作総指揮: バリー・ウォルドマンほか、原作: ジョン・ゴーディ、脚本: ブライアン・ヘルゲランド、音楽: ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
出演: デンゼル・ワシントンジョン・トラヴォルタ、ジョン・タートゥーロ、ルイス・ガスマン、マイケル・リスポリ