吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

男と女

 「午前十時の映画祭、何度見てもすごい50本」。長男Y太郎(某芸術大学映像学科1年)と親子で2本立て鑑賞の1本目。

 

 再見。2年前に初めてDVDを見て大感激。興奮してレビューを書いたものだが、今回は落ち着いて鑑賞することができた。何しろすでにサントラも買ってしまってメモリに取り込み、いつも携帯電話で聴いているし、ストーリーはもうわかっているから、「お馴染みの音楽、お馴染みの人との再会」という安心感がある。その分、新鮮な感動がないのはいたし方ない。今回は、初見のときと違う部分に目が行き、雰囲気を味わうよりもむしろ細部の演出やカット割りが気になった。前回はアヌーク・エーメの美貌に目を奪われたが、今回はジャン=ルイ・トランティニャンのハンサムぶりにもうっとり。こういう美男美女なら一目会ったその日から恋に落ちるのも納得できる。



 Y太郎は「女はこういう映画が好きやな」と言っていたが、どうしてどうして、この映画は男性にも受けるに違いない。というのも、アクションシーンが盛りだくさんだらからだ。ヒロイン・アンヌの夫がスタントマンだったので危険なスタント場面が映るし、主人公ジャン・ルイの職業がレーサーだからレース場面がふんだんに映る。車好き、アクション好きな男性たちも喜ぶだろう。見終わってYが「ゴダールっぽいな。ゴダールは『男と女と車があれば映画はできる』と言うたんや」と教えてくれた。なるほど。ル・マン耐久レースやモンテカルロのレース場面などは車が好きではないわたしが見ても軽い興奮を覚えた。特に今はもう見られない「ル・マン式スタート」(車をコースの端に並べ、レーサーが走って車に乗り込む)は大いに気分が高まる。アンヌはこういう危険な仕事に就く男に惚れる女性なのか、なるほど、こういう状況設定は恋愛映画の情感を高める上ではたいへん効果的だ。

 前回はあまり気にならなかったが、今回はこのレースの場面が多すぎるのではないかと感じた。それよりもっとアンヌとジャンのからみを増やしてほしかった。


 初見のときに気に入った場面はやっぱり今回も大好き。アンヌの姿を探して浜辺を疾走するジャンの車、かぶさるのはアップテンポバージョンの「ダバダバダ〜」(曲名は「時速200キロ」)、アンヌと子どもたちを見つけたジャンが車のライトを点滅させて合図する。喜び勇んで駈け寄る三つの後姿、飛びついて抱き合う男と女。カメラは360度回転しながら二人の姿を捉える。この感情の高ぶりを引きずったまま、次のシーンではBGMがない。ベッドで抱き合う二人のシーツの衣擦れの音だけが静かに聞こえる。この場面はこの映画の中の唯一のラブシーンといってもいいのに、アンヌは亡夫の思い出にとらわれてジャンとの愛に躊躇いを感じてしまい、二人は気まずく別れる。ここで流れる曲は「愛は私達より強く」。そして場面はカットバックし、二人がそのベッドインの前にホテルのレストランで食事をしている様子が映る。ここも台詞がおしゃれだ。給仕人がもっと料理を注文してほしそうに立ち尽くしているが、二人が頼んだ料理はほんのわずか。ウェイターが立ち去った後、アンヌが言う。

「何か頼まないと悪いみたいね?」
「よし、では喜ばせてやろう。ギャルソン!」その声に飛んでくる給仕人。
「ウィ」
「”部屋”を頼む」



 ルルーシュは愚かにも、こんなにおしゃれで斬新な映画の続編を作ろうとし、その続編は不評を買ったが、本編のほうは未だに魅力衰えず、この日も満席であった。Yも「短い映画やなぁ」と感想を漏らしていたように、余分なところのないスリムな作品。もっと長くてもいいが、やはり絶品には違いない。
 2年前のレビューはここ。http://d.hatena.ne.jp/ginyu/20080406/p1


 その後、念願のサントラを買って、今ではわたしの携帯電話にメモリを入れて毎日のように聴いている。

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UN HOMME ET UNE FEMME
フランス、1966年、上映時間 104分
製作・監督・脚本・撮影: クロード・ルルーシュ、脚本: ピエール・ユイッテルヘーベン、音楽: フランシス・レイ
出演: アヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャンピエール・バルー、ヴァレリー・ラグランジ