吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

マチュカ 〜僕らと革命〜

 アジェンデ政権下のチリを少年の視点で描く。
 主人公ゴンザロは金持ちのぼんぼん。いかにも育ちがよくひ弱そうな彼は、学校ではいじめられっ子だ。そこにスラムからやってきた、貧しい子ども達。社会主義政権の政策により、金持ち学校にもスラムの少年達が通えるようになったのだ。しかし、スラムの少年たちは制服も買えず、薄汚い服装であり、クラスメイトから浮いた存在だ。スラムからやってきた野生児のような力強さを秘めた少年がペドロ・マチュカだった。ゴンザロとマチュカは親しくなり、お互いの家を行き来することによって、まったく異なる階層の暮らしを知ることになる。

 
 少年の視点であるからこそ、軍事クーデターにも逼迫感がなく、それはテレビニュースで知る遠い出来事にすぎない。しかし、政権が暴力によって転覆されたことの意味は、じわじわと実生活に忍び寄る。学校ではリベラルな神父である校長が放逐され、スラムの子ども達が放校になる。


 途中で、ルイ・マルの「さよなら子供たち」に似ているなぁ、でもルイ・マルに比べると感動が薄いと思っていたら、「さようなら、子どもたち」という台詞が登場したのでびっくり。感動や緊張感に欠けると思った本作も、最後に至って強烈な印象に変わる。子どもたちにとって貧富の格差など関係なく友情が築けると思ったのに。「ぼくは違う、ここの住民じゃない。よく見て!」と貧民狩りをする兵士に向かって叫ぶゴンザロは既に姑息な金持ち坊やへと戻っていた。屈託のない少年時代は終わったのだ。それがこのような悲劇によって知らされるとは!

 
 「さよなら子ども達」に比べて感動が薄いことの一因に、チリの政治状況をあまり知らないことが挙げられるだろう。金持ち奥さんのデモとか食糧難で配給の列に並ぶといった様子は知っていたが、それらが子ども達の生活に及ぼす描写が、ルイ・マル監督作品に比べて繊細さと緊張感に欠けるのだ。ナチスの恐怖をわたしたちは既にさんざん知らされてきた。しかし、ピノチェトの軍事独裁がどれほど恐ろしいものであったのかをあまり知らない。


 ピノチェト! その名は映画には登場しないが、悪名高き独裁者として歴史に名をとどめている。(レンタルDVD)

2004年 / スペイン・チリ、120分