吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

ちょんまげぷりん

 江戸末期の若き旗本が現代にタイムスリップし、行く当てもなくシングルマザーの家に居候。タダ飯食いは申し訳ないと「奥向きのことは拙者がいたしますゆえ」と申し出る。これが意外やこの若武者は、なんとお菓子作りの天才を発揮し始めるではないか! ……という奇想天外なコメディ。かなり笑えました。というか、笑っている人たちが大勢いて、それを観察するのが楽しかったです。

 映画サービスデーと日曜日が重なった日に観たので、映画館はものすごい人混み。この映画も人気タレントが出演するからか、若者たちで賑わっていた。

 内容はたわいのないコメディなのだが、カメラが面白さを狙っている構図がことごとくうまく笑いを誘っていて、なかなかのものだ。それにたわいがないとはいえ、異文化の葛藤と融和という大きな隠れテーマも見逃せない。同じ日本人どうしでも、200年近くを隔てた男女の出会いは文化軋轢を生む。そして現代人の笑いの矛先はもちろんタイムスリップしてきた旗本木島安兵衛の挙措にある。現代人から見れば遅れた人間であり、場をわきまえない安兵衛の一挙手一投足や発言の数々が笑いのタネ、というのは虐めの構造がそこに隠れていることも忘れてはならない。

 しかし、観客に笑われているはずの安兵衛の佇まいの品のよさや威厳など、現代人が失ってしまった美しさに惹かれ、いつのまにか観客は安兵衛を尊敬のまなこで見るようになる。それに安兵衛はまたたくまに現代日本に馴染んでしまう、きわめて知的能力の高い若者なのだ。

 家事と育児と仕事の両立というきわめて現代的かつ困難なテーマに立ち向かった「ワーク・ライフ・バランス」映画であるが、さて、その解決やいかに。

 映画の中で安兵衛さんが作るお菓子の数々が実に美味しそうで、演じた錦戸亮の手さばきも見事であった。なかなか楽しい一作。最後のオチもよかった。子役がうまいです、これも特筆すべき。

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108分、日本、2010
監督・脚本: 中村義洋、原作: 荒木源、音楽: 安川午朗
出演: 錦戸亮ともさかりえ今野浩喜、佐藤仁美、鈴木福中村有志、井上順