吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

フリーダム・ライターズ

 荒廃する高校で悪戦苦闘し、やがて生徒たちの心をつかむ女性教師の物語。「フリーダム・ライター」とはすなわち、書くことを覚えた生徒たちのことであり、生徒に<書く喜びと自由>を教えたのはその熱血女性教師である。


 こういう映画を見ると、内田樹さんの言葉を思い出す。

私たちの社会組織はオーバー・アチーブする20%と「とんとん」の60%と、「アンダー・アチーブ」の20%を含んでいる。 オーバーアチーブする人間はしばしば標準の5倍10倍のパフォーマンスの高さを示すことがある

教育上のオーバーアチーブというのは、平たく言えば、「レギュラーな教育活動以外のことを、大学の内外で、公的資源も私的資源もごっちゃにして、管理も統制も受けないで気ままに行う」こと

 これは内田さんのブログからコピペしたが、同じことが『街場の教育論』やその他の本の中に書かれている。この映画の主人公である女性教師はまさにオーバーアチーブする人だ。それゆえ職場では古株の教頭ににらまれる。子ども達には好かれるようになるが夫には愛想をつかされる。これはつらいね。「仕事と僕とどちらが大事だ?」と迫ってくる夫を前にしてヒラリー・スワンクは「わたしを愛しているならそんな質問はしないはずだわ」と泣く。こういうのは男女の立場を逆転させてよくあるパターンなのだが、この映画ではモーレツ教師は女性である。

 
 なんだか他人事とは思えなくて見ていて辛かった。と同時にとても気持ちの良い、素直に感動できる物語だ。なによりもこれが実話だというところに説得力がある。教師にはぜひ見てほしい。(レンタルDVD)

FREEDOM WRITERS
123分、アメリカ、2007
監督: リチャード・ラグラヴェネーズ、製作: ダニー・デヴィートほか、製作総指揮: ヒラリー・スワンクほか、脚本: リチャード・ラグラヴェネーズ、音楽: マーク・アイシャム、ウィル・アイ・アム
出演: ヒラリー・スワンクパトリック・デンプシー、スコット・グレン、イメルダ・スタウントン、マリオ