吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

キャラメル

 レバノン映画を見たのは初めてかもしれない。
 戦火の国であることをほとんど感じさせない映画は、どこの国にでも居そうないろんな年代の女たちの物語。ナディーン・ラバキー(監督・主演)が色っぽい。それにしても化粧の濃いこと! もともと濃い顔立ちなのにその上あれだけ隈取りしたらほとんどパンダ。でもそれが似合っているからすごいね、やはり相当の美人。彼女の偉いところは、自分の魅力を知っているということ。そしてちゃんと一番美しく艶めかしく見えるように撮っている(撮らせている)手腕だ。


 舞台はベイルートの美容室で、タイトルの「キャラメル」は、この美容室では熱したキャラメルを使った脱毛エステを行っていることに由来する。溶けて伸びたキャラメルがぬらぬらとねじれる様子はなんともなまめかしく、甘ったるい香りが漂ってきそうで、この映画全体の雰囲気にマッチしている。映画は、美容室のスタッフや客たちの女性群像劇。


 世話の焼ける姉リリーに翻弄される老女ローズが切ない。道ならぬ恋に泣くラヤールも切ない。レバノンでは結婚していることを証明しないとホテルの部屋も取れない?! それでは不倫なんてまず無理ですね、性道徳にうるさいイスラム教国ならでは。そしてローズ老姉妹はカトリックのようだし、宗教ごとの文化や考え方の違いが興味深かった。


 オーディションを受けまくるジャマルの衝撃の秘密。これが最後に明かされると唖然としてしまった。そこまでやるか! 女の見栄って怖い。既に若さを失った女のプライドと見栄に胸をえぐられるようだった。

 
 美容室兼エステサロンを舞台にした女の物語、さすがは女性監督の脚本だけあって、心理描写が細かく、日本人にもよく理解できるところがヒットの原因でしょう。群像劇だけあって登場人物がみな魅力的。わたしは老女ローズに痛く同情した。彼女が化粧を落とす場面の悲しいことといったら!(レンタルDVD)

SUKKAR BANAT
96分、レバノン/フランス、2007
監督・脚本: ナディーン・ラバキー、製作: アンヌ=ドミニク・トゥーサン、音楽: ハレド・ムザンナル
出演: ナディーン・ラバキー、ヤスミン・アル=マスリー、ジョアンナ・ムカルゼル、ジゼル・アウワード、シハーム・ハッダード