吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

コネクテッド

 ハリウッド映画を香港でリメイクするという、通常とは逆のリメイクで、しかもオリジナルを超えた面白さというパープルローズさんの評(http://www.discas.net/netdvd/reviewListC.do?keyReview=431941&pT=0)を信じてレンタルしたところ…1回目はあまりにも疲労していたので30分ほどで熟睡。2回目、あまりの面白さに快哉!

 
 オリジナルの「セルラー」(http://d.hatena.ne.jp/ginyu/20071215/p1)をほとんど覚えていないのだけれど、本作は大筋ではオリジナルのプロットをなぞっているいとはいえ、細部はかなり派手になって、設定も複雑とみた。ある日突然誘拐された女性が、必死の思いでかけた電話。繋がった先は見も知らぬ男の携帯電話。というプロットだけが同じであとはまるで違うような気がする。気がするだけで確たる事は言えない。なにしろオリジナルをほとんど覚えていない。主演女優すら覚え間違えていた。ジュリアン・ムーアだと思いこんでいたが、キム・ベイシンガーだったようだ。


 本作の何がいいかといって、緊迫感が最後まで途切れないことだ。オリジナルよりいろいろと要素を詰め込んだために、かなり無理な設定があると思えるが、どうせ映画だからとそこはそれ、すべて許せる範囲内。カーアクションの派手さもオリジナルにはなかったような気がするし、何度もどんでん返しのある展開にもまったく観客を飽きさせないサービス精神が溢れている。


 本作は、娘を想う母の心と息子を想う父の侠気が重なり合い、観客に感動を生むように作られている。とはいえ、この両者の家族愛にはかなり違いが感じられる。誘拐された母はずっと泣いてばかりで(もちろん知恵は絞るのだが)、電話を偶然受け取った見ず知らずの「父親」は、留学に旅立つ息子との約束(空港に見送りに行く)を守ろうと必死になりつつも、「男たる者の役目」を自覚して悪人達に立ち向かう。女は泣きながら子どもを愛し、男はマッチョに闘うことで子どもを守る。この性別役割分業がこの映画では見事に描かれているところが、昨今のハリウッド映画との違いか。しかし、日本人としてはこういう湿っぽい部分が妙に琴線に触れるから困ったことだ。派手なカーアクションが父親の気持ちと共振していくシーンの緊迫感なんて、人の子の親なら素直に共鳴できるところ。


 というわけでかなりお奨め度の高い娯楽作。仕事の合間の息抜きにはぴったりではないでしょうか。(レンタルDVD)

製作・監督: ベニー・チャン、原案: ラリー・コーエン、脚本: アラン・ユエン、ベニー・チャン、オリジナル脚本: クリス・モーガン、音楽: ニコラ・エレラ
出演: ルイス・クー、バービー・スー、ニック・チョン、リウ・イエ、エディー・チョン