吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

未来をつくる図書館 ニューヨークからの報告

 これぞ理想の図書館。作家トニ・モリソンが絶賛するニューヨーク公共図書館は、篤志家の寄付によって建てられた。ニューヨーク市が運営費を出すことを条件に、カーネギーなどの実業家が莫大な金額を寄付したのだ。89の分館と4つの専門研究図書館を擁する、市民による市民のための図書館。さまざまな講座を開き、集金のためのパーティを開催し、高価なオンラインDBを惜しみなく市民に提供する。運営はNPOが行っている。


 ここには資金集めのための部局があって、日夜知恵を絞っているという。ふつうの図書館員にはない才能が求められる。館長は社交家で資金集めの天才だそうだ。

 
 この図書館のファンはポンと18億円を寄付するし、理事は9億円を自ら寄付している。寄付文化が日本と全く違う。ちなみに日本企業相手にプロモーションを行ったが、まったく反応が悪いため、「プロモーションのための投資に見合わない」として、日本企業への寄付の申し込みは止めたそうだ。


 うちもここに倣って、高額寄付者の名前をプレートに刻んで掲示しようかなぁ。

 しかしこの図書館にも不況の波が押し寄せ、先頃、NY市が3, 680万ドルの予算削減を要求したという。これは1970年代、ニューヨーク公共図書館が破たんの危機にあったときよりもさらに過酷な削減額となる。もしこのまま資金が回復されなければ、10館が閉鎖、開館日が週4日に削減、総労働力の36%に当たる736名のスタッフの解雇、といった結果に繋がってしまうということだ(参照:http://current.ndl.go.jp/node/16199


<書誌情報>
未来をつくる図書館 : ニューヨークからの報告 / 菅谷明子著. 岩波書店, 2003. (岩波新書 ; 新赤版 837)