原作本は、『ダ・ヴィンチ・コード』よりも『天使と悪魔』のほうが先に出版されたらしい。映画化は『ダ・ヴィンチ・コード』の続編が本作ということになっているから、ラングドン教授も冒頭そのような台詞を吐く。
前作では原作を読んでから見たから、原作に比べて展開の早すぎる内容に不満だったが、今回は原作本を未読なので、そういう不満はない。むしろスピード感溢れる展開に満足。
キリスト教の教義について少しは知っていないとなにも面白くない、という点では前作と同じだが、実をいうと、前作ほどにはスコラ哲学的ではないので、仏教徒日本人にもわかりやすいだろう。ローマ教皇を選出するコンクラーベの方法についてもよくわかるハウツーものであり、その点も興味深い。わたしのようにローマに行ったことのない人間には地図が分かりづらいのだが、それでも十分楽しめるので、けっこういいのではないでしょうか。
「あなたは神を信じますか?」と執拗に繰り返される主人公への問いが、つまりは観客であるわたしたちへの問い。キリスト教原理主義を信奉するのか、それとも相対主義に生きるのか? いずれにせよ、わたしたちはもはやただ一つの原理に基づいて生きることは許されない世界にいる、ということを自覚すべきなのだろう。ロン・ハワードが監督したことの意味はこの一点にある。
そうそう、見物(みもの)はローマ教皇庁のアーカイブ。アーキビストとしては興味津々でありました。
ANGELS & DEMONS
138分、アメリカ、2009
監督: ロン・ハワード、製作: ブライアン・グレイザーほか、製作総指揮: トッド・ハロウェル、ダン・ブラウン、原作: ダン・ブラウン、脚本: デヴィッド・コープ、アキヴァ・ゴールズマン、音楽: ハンス・ジマー
出演: トム・ハンクス、アイェレット・ゾラー、ユアン・マクレガー、ステラン・スカルスガルド、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ニコライ・リー・コス