吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

3時10分、決断のとき

 去年のマイベスト10作品についてはすべてレビューをアップしたけれど、後まだお気に入り作品が30本近く残っているので、ぼちぼち書いていくつもり。


 人間の誇りとはなんだろうか? 貧困のどん底にいる男にとって、自尊感情は何ものにも代え難く大切なものだったのだ。これはまさしく男の映画で、父が息子に示すべき規範について描いている点で、胸打たれる。とともに、男ってつらいんだな、いっそ「男」を下りればいいのに、とも思う。


 久しぶりの西部劇。久しぶりにガトリング銃を見た。西部劇は流行らないというのがここのところ、ハリウッドの常識となっているが、その常識を覆したヒット作だという。なるほど確かによくできているし、アクションもいまふうのメリハリのあるもので、1957年の「決断の3時10分」をリメイクした本作はオリジナルよりかなり派手になっているという。


 南北戦争に従軍して片足を失った農場主のダン・エヴァンスは、強盗団のボス早撃ち名人ベン・ウェイドの護送を200ドルで引き受ける。ダンには病弱な次男と、反抗期の長男がいて、貧困と借金にあえいでいたのだ。明日の午後3時10分発ユマ行きの列車にベン・ウェイドを乗せること。それがダンの役目だ。だが、駅までの道中にはボスの奪還を計る強盗団一味が待ち受け、アパッチ族の襲撃や鉱山でのならず者たちとの格闘など、様々な艱難辛苦が待ち受ける。果たしてダンはベン・ウェイドを無事列車に乗せることができるのか?!


 片足を失っただけではなく、妻や息子たちからの尊敬も失いつつある情けない父親ダンが、200ドル目当てに危険な護送を引き受ける。ダンは最後になってなぜこの仕事を引き受けたのかを告白するが、そこに至るまでのダンとベン・ウェイドとの心の交流が見せ場だ。ベン・ウェイドは強盗団のボスとはいえ、聖書を諳んじ、絵をたしなむ芸術派キャラクターとして描かれていて、魅力的だ。演じたラッセル・クロウがかっこいい。本作ではこの主役二人のキャラクターが魅力的なので、作品全体が光っている。


 ラスト、ホテルから駅までの800メートルの銃撃戦は迫力の上にも迫力。これはすさまじい見せ場だ。男達が命がけで守ろうとしたものはなんだったのか? 人として生きる、その誇りのために命をかける。これは、全人格を否定されて絶望のうちに生きる日本のロスジェネ世代の若者たちにも通じる心性ではなかろうか。秋葉原で無差別殺人に至った青年と、この映画で命を賭けて囚人を護送しようとする若き父親の姿がダブって見えた。

3:10 TO YUMA
122分、アメリカ、2007
監督: ジェームズ・マンゴールド、製作: キャシー・コンラッド 、原作: エルモア・レナード、脚本: ハルステッド・ウェルズほか、音楽: マルコ・ベルトラミ
出演: ラッセル・クロウクリスチャン・ベイルローガン・ラーマンベン・フォスターピーター・フォンダ