吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

パリより愛をこめて

 「96時間」の大ヒットに気をよくしたリュック・ベッソンが、またしてもパリを舞台にダイハードに暴れまくるヤンキーおじさんの映画を作りましたとさ。基本路線は「96時間」と同じだが、リーアム・ニーソンではどうしても生真面目なお父様になってしまったのが、本作ではジョン・トラボルタのクレイジーぶりが笑わせてくれるのがよろしい。


 ロマンス、お笑い、アクション、アクション、バイオレンス、お笑い、アクション、バイオレンス、ロマンス、お笑い、アクションアクションアクションアクション、ロマンス。というリズムかな。


 タイトルはもちろん「007/ロシアより愛をこめて」をもじったもので、主人公の名前がジェームズなのは、かのMI6のボンドにちなんでいる。


 フランス在任大使の若きイケメン補佐官が、実はCIA(?)の秘密工作員見習い、という設定。大使館というのはスパイの巣窟だからこれはまあ、ありえるでしょう。で、相棒がアメリカからやってきたチャーリー・ワックス。これがジョン・トラボルタ演じる、スキンヘッド、ひげ面の見るからに怪しい中年。こんな出で立ち、税関を通れるわけないわ。で、案の定、チャーリーが税関で大騒ぎを起こしているところに国家保障にかかわる大事な仕事をしたくてたまらないジェームズ・リース補佐官が登場。この場面からしてフランス人をばかにして笑いを取るという自虐ネタ。「2度の大戦でアメリカに助けてもらったくせにアメリカ嫌いなんだろう!」とフランス人税関役人に食ってかかるチャーリーであります。おまけに「蛙食いめ!」と吐き捨てる。

 で、その後、任務なんだか逸脱しているんだがよくわからないけど、行く先々でひたすら銃をぶっ放すわ、悪人の首をへし折るわ、暴れたい放題。その様子を呆然と眺めるジェームズ・リースくん、オマヌケ顔でコカインの入った花瓶を「証拠品だから」と後生大事に抱えたまんま。クレイジー・チャーリーは24時間に26人を殺すというバイオレンス中高年で、あまりにも気持ちの良いサクサク殺人演出なので、「こんな暴力映画は!」と眉をひそめている暇もない。



 という感じで、ひたすら「ありえないバイオレンス」シーンが続く。もちろんチャーリーは不死身の超人だから、決して銃弾は当たりません。ジェームズ・リースくんは婚約したばかりの美しい婚約者キャサリンに首ったけなんだけれど、仕事が仕事だけに愛想をつかれかかって危機一髪!

 

 「96時間」と基本路線は同じと書いたが、本作ではそこにロマンスの要素が入り、さらに、ダイハードおじさんに若い相棒が付いたという点で凸凹コンピというかボケとツッコミというか、好対照な二人に笑える要素も加わった。

 この映画の見所の一つは、観光客が行かないパリの風景。エッフェル塔だのセーヌ川だのといった観光名所はつかみの部分でちらりと映るだけで、あとはパリの暗部が描かれる。移民の底辺労働者がたむろする工場や、スラムと化した低所得者向けの公営住宅、売春街などなど…。どこの町も住めば都のいっぽうで、地元住民にとっては美しい町だけではないことも周知の事実。パリの暗部を見せただけでもこの映画の意義があるのではなかろうか。フランスの移民労働者たちや若者のデモの様子が頭をよぎった。


 アラブのテロリストだの麻薬犯罪の中国マフィアだのという設定は要するにアクションシーンのためにあるので、これは実はどうでもいいのであり、こういう映画にお気楽に現実世界の重大な問題を持ち込むなという良識派の批判をものともしない怒濤の95分でありました。



 というわけで、疲れているときや何にも考えたくない人にお奨め。「パルプ・フィクション」を思い出させるシーンもあって、ファンサービスも忘れてません。

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FROM PARIS WITH LOVE
95分、フランス、2010
監督: ピエール・モレル、製作: インディア・オズボーン、製作総指揮: ヴィルジニー・ベッソン=シラ、原案: リュック・ベッソン、脚本: アディ・ハサック、音楽: デヴィッド・バックリー
出演: ジョン・トラヴォルタジョナサン・リス・マイヤーズ、カシア・スムートニアック、リチャード・ダーデン、
アンバー・ローズ・レヴァ