吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

敵こそ、我が友 〜戦犯クラウス・バルビーの3つの人生〜

戦争犯罪や戦争責任について考えるには格好の題材となるドキュメント。


 若くしてナチスの幹部となったバルビーは、戦後、南米で名前を変えて生き続けた。この映画を見ると、南米の独裁政権がかくも残忍なものであったことの理由がよくわかる。なるほど、ナチスの残党たちが左翼狩りの方法や拷問の手練手管を教えたのだ。バルビーを生かし続けたのはアメリカCIC(Counterintelligence Corps)であったことが当時の関係者の証言で明らかになる。戦後の反共政策のためにはかつての敵がアメリカの友となったのだ。ゲバラを殺したのもバルビーのせいだということになっている。


 興味深いことは3つ。


 1.バルビーの娘が登場する。彼女にとってはバルビーは残忍なナチスの残党ではなく、心優しい素晴らしい父親であったこと。バルビーに関して巷間言われていることは信じがたい誤解であるという証言。
 2.バルビーがボリビアで捕まってフランスで裁判を受けたとき、被害者達がまるで昨日のことのように被害の実相を涙ながらに語り、バルビーを一目見るや、「この男よ!」と指さして叫んだこと。彼らにとって時間はあの日から止まっており、バルビーを決して許さないし、極刑を望んでいる。
 3.なぜイスラエルの秘密警察がバルビーを捕まえなかったのか? バルビー達ナチスの残党をアメリカが飼っていたことをイスラエルはどのように理解していたのか?   (レンタルDVD)

−−−−−−−−−−−−−−−
MON MEILLEUR ENNEMI
90分、フランス、2007年
監督: ケヴィン・マクドナルド、製作: リタ・ダゲール、音楽: アレックス・ヘッフェス
ナレーション: アンドレ・デュソリエ