吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

パリ、恋人たちの2日間

ニューヨークに住むフランス女とアメリカ男のカップルが、二日間だけ彼女の故郷パリへやってきて、彼女の家族や友人達と一緒に過ごすことにより、今まで表面化しなかった二人の間の異質なものが表出する、というお話。さて、ヒビが入った二人の関係は修復可能なのかどうか?!

 とにかくしゃべくりまくるコメディ。まるでウディ・アレンのよう。しかしジュリー・デルビーはアレンよりもむしろ80年代のスコセッシを参考にしたという。言葉の通じないところでアメリカ人をこけにするフランス人の意地の悪さったらないわ! フランス映画は会話のエスプリが小気味よく利いていて、知的なところがなんともいえず楽しい。そして本作はそれに加えて下ネタ満載なところがすさまじい。本当にこんなにあけすけに家族の中でも性的な会話を交わすのだろうか?

 ジュリー・デルビーが製作・監督・脚本・主演・編集・音楽までこなしたという驚くべき才能を見せつけた作品だけれど、彼女の本当のパパ・ママが映画でも両親の役を演じているところがとっても不思議。こんな恥ずかしい台詞を娘の脚本・監督の作品で演じられるということろがフランス人のすごさかもしれないと、自分がもしこの作品の監督ならとうてい両親に見せられないと、このあけすけなエロスの感覚の彼我の桁違いなことを知って驚天動地でございます。

 しょせん男と女は異文化、他者どうし。こんなものがなんで一緒に暮らせるのか不思議と言えば不思議だ。だから、フランス女とアメリカ男が異文化の極地で互いを異星人のように思うのは当然のこと。ただ、それをこの映画のように徹底して戯画化されるともうひたすら笑うしかない。恋多きフランス女は誰とでも寝るし、別れた恋人とも友達づきあいを続けるし、一生一人の男にだけ束縛されるなんてまっぴらだと思っている。おまけに直情径行。おまけに政治的に相容れない相手には情け容赦ない鉄槌を下す。

 フランス映画らしい、アメリカへの政治批判も忘れないし、フランス映画らしい知的なジョークも満載で観客の心をくすぐる。台詞の自然な流れといい、演出の楽しさといい、ジュリー・デルピーにはひたすら脱帽しました。これほど人を食った会話劇も珍しい。見ていてイライラさせられる、見ていて腹が立つ、見ていてバカ、と言いたくなる、見ていて「その通り」と快哉を叫びたくなる、見ていて「ええかげんいせえ!」と叫びたくなる、そんなふうに映画にのめり込めるフランス映画も珍しいのでは? とにかくこの監督の才能には脱帽です。

 いくらなんでもこんなフランス女はちょっと極端すぎるでしょ〜?と思ったけれど、ュリー・デルビーのインタビューを見ていると、「典型的なフランス女とアメリカ男のラブストーリー」というから驚き。日常会話でこんなに下ネタ満載なの? ほんとにぃ〜?

 まあ、とにかくフランス女には近づくまいと思った男性は一人や二人ではないでしょう。(レンタルDVD)(PG-12)

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パリ、恋人たちの2日間
2 DAYS IN PARIS
フランス/ドイツ、2007年、上映時間 101分
製作・監督・脚本・編集・音楽: ジュリー・デルピー、製作: クリストフ・マゾディエほか、製作総指揮: ニコラウス・ローマン、ティロ・サイファート
出演: ジュリー・デルピー、アダム・ゴールドバーグ、ダニエル・ブリュール、マリー・ピレ、アルベール・デルピー、アレクシア・ランドー、アダン・ホドロフスキー